市立病院は帳簿上黒字でも実質赤字です
- 病院の収入は、主に医業収入(外来収入と入院収入)である。国や県からの補助金があるが、極めて少額である。
- 市立病院が一般病院と大きく異なるのは、医業外収益(市の一般財源から繰入れられる税金)の存在である。
- 病院の支出は、機材費や薬剤費等があるが、主として給与費である。
- 市立病院は医業収入に対し給与費比率が県内の自治体病院の中で突出している(参考1)。
- 市立病院の黒字のからくりは、上述①+②-③により、支出が収入を上回っても税金の繰入れを増やせば黒字になる。
- 総務省は、離島・僻地・病院が少ない地域に病院を建てる際、赤字で破綻しないために、自治体に一定の税金繰入れを認めている。
- 市立病院は取り立てて政策医療に貢献していない。今日まで、税金の繰入れを増やす言い訳に使っており、松本市も市議会議員も騙されてきた。とんでもないことである。
市立病院は僻地医療指定病院ではない。2類感染症対策は国から別に補助金が出ている。周産期医療は何処の病院も普通に行っている。経営努力をしないので赤字が増えるからといって税金の繰入れを増やすことを根本的に改めるべきである(参考2)。
なお、奈川診療所への医師派遣は、市健康福祉部の予算、すなわち、市の予算で行われ ており市立病院経営とは直接関係ない。塩尻市楢川村診療所も同じである。 - 多額の補助金によって税金依存体質になり、経営努力と医療の向上が疎かになり、他病院との競争力が低下して赤字から脱却できなくなっている。(参考3)
- 市立病院予算は、初めから税金繰入れ(赤字の穴埋め)が計上されている。他の病院からすれば官業が民業を圧迫することになっている。
(参考1)平成30年度長野県公立病院事業決算書200床未満(総務省発表)
松本市立病院(75.7%)、大町総合病院(63.2%)、町立飯綱病院(49.4%)、辰野病院(67.6%)、国保与田窪病院(65.7%)、国保軽井沢病院(59.1%)。(%)は収入に対する給与費である。
(参考2)自治体病院と政策医療との関係
政策医療は重点疾患と重点事業に分かれている。疾患は、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神病の5疾患に感染と在宅医療が近年加わった。 5事業は救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児救急医療を含む小児医療である。5事業は、他の病院も規模や能力に応じてやっていることで、市立病院が率先してやっているわけではない。
日本医師会は地域の実情を充分に反映し、適正な医療連携を構築することが必要だと提言している。既に一定の財政措置が行われているので、市立病院が繰入金(税金)を従来の3億円から7億円に増やす根拠にならない。赤字経営の穴埋めに、医業外収益を利用してはならない。また、病院の返済金に充てることは市の財政規律を根本から崩すことになる。
(参考3)市立病院の経営予想は、大甘かつ出鱈目である。
- ①全国の病院でコロナ後は、外来・入院患者が減少しているが、市立病院は増えるとしている。高齢者総数が増えれば市立病院の患者が増えるという見通しは全く理解できない。
- ②市立病院の従来の病床稼働率は、70〜80%台。病床を199床から180床にした途端90%台に上がっている。97%は瞬間風速であり、農繁期も始まり、年間を通じ95.4%を保ち続けることは不可能である。
- ③外科手術患者を倍増させ、入院単価を一人63,500円にすることにより健全経営にする。これは過去の実績、今の実力からあり得ない。
- ④患者の減少は、厚労省の予想より5年〜10年前倒しで進行している。急性期患者が多く、手術を沢山する病院しか収入が増えない仕組みに変わっている。
- ⑤患者が病院を選ぶ傾向が、ますます強くなっている。
- ⑥市立病院は、まともな「経営強化プラン」を策定しなければならない。収入を増やすプランは、実現不可能なので失敗する。
- ⑦10年先を見越し、厳しい経営戦略を持たない病院は生き残れない。