なぜ市議会議員は「潰れる恐れがある計画」に賛成するのか?
市幹部と市議会議員は、菅谷市長時代の「失敗」と「失敗から立ち直った経験」から何一つ学んでいない。長期に亘り、市民に大迷惑をかける茶番劇をいつまで演じるつもりなのか猛省願いたいものです。
病院建設において、推進役の病院幹部は医療のプロ。それを評価する議員は素人同然です。議会という同じ土俵で計画の当否を検討する際、その場に行司役がいません。監督役を務めるべき病院局長が推進役たる事務長と同一人物ですから、「何をか言わんや」です。議会という民主的な場で、病院幹部は議員が判断できかねないことを良いことに、間違った考えを押し通しています。
しかし、行司役はいます。本稿を真摯にお読みになっておられる、松本市の主人公たる「皆さん」です。助言者もいます。正鵠を得た「提言」をなした、医療専門家集団「専門者会議」の皆さんです。地元の医療者も杜撰な計画に反対です。 このまま病院を建てれば経営不振で破綻し、松本市の負の遺産になることに対して、行司役たる「市民の皆さん」はどう軍配を下すのでしょうか。
議員は、医療や病院は難しくて分からないと言う。それならば、医療関係者や専門家の意見を聞いて勉強するのが、市民の代表としての務めである。しかし、病院側の提案に疑問があっても、言いくるめられてしまう。
根底に“人の命は地球より重い”、“どうせ建てるなら立派な方が良い”、“市と病院の言い分は正しい”という安易なロジックに議員が囚われているからではないか。
菅谷市長時代、市議会は、4つの失敗を見過ごした。
- 発がん物質で汚染された広大な土地の購入に賛成したが、「松本市土地開発公社規則」違反を知らなかった。
- 建設計画は、岡谷市民病院の模倣だった。
- 他の病院と比べ、非常識に莫大な建設費。
- 経営予想が杜撰で、税金の投入が増える事実。
医者市長の肝煎りだから大丈夫と考えたのか、全会一致で賛成してしまった。
幸い市幹部が、杜撰な計画に気付き、自ら計画を中止した。菅谷市長は、慢性赤字病院の経営改革を抜きに出来ないことに気づき、改革の断行を命じ、新たに病院事業管理者(以下、管理者)を選任したところで退任している。
臥雲市長は、市立病院の分析と新病院のあり方を明確にするため、「専門者会議」を招集し、国の方針に従い、西山地区と松本市に役立つ「提言」を一旦受け入れた。ところが、“病床と職員を削減し給与を下げれば職員が退職して病院が潰れてしまう”と猛反発した管理者の言うことを市長が信じたことは、既に述べた。結局、病院を蝕んでいる税金依存体質を放置したまま、もとの病院建設に戻ったことになる。市は、考えが異なる管理者を即刻更迭すべきであった。
市議会議員は、肝心なことを理解していないのでないか。特別委員会の議事録を確認すると、「杜撰な建設計画に賛成する議員」は、勉強しないし積極的に発言していない。病院側の提案は、医療者が見れば、①国の医療政策に反している。②経済の激変や高齢化と人口減少を考えていない。③採算性を度外視した信じられないほど能天気な予想。そして、④地元医療関係者の警告を無視している。⑤残念なことに、市議会は7年間この問題に取り組んでいる「市民の会」を招聘しない。
ところで、病院建設特別委員会は、15人の議員で構成されている。「建設基本計画」の議会としての承認は、市議会議員選挙後であったが、市が開催を急がせたので9人で議論され5:3で承認。「経営計画」の承認は、8:6で承認された(「採決」ではない)。
病院側と反対する議員が激論を戦わせるが、“頑張ってやるから安心して欲しい”で最後は押し切られている。これが、科学者たる医療者の発言だろうか。また、管理者は河岸段丘に囲まれた建設地を絶対安全と強弁しています。彼は地震や地質の素人なので強い違和感を覚える。議員さん、“おかしいと思いませんか” 事実を知れば信じられないことだらけである。
事実が正しく報道されないので、市民は蚊帳の外に置かれている。
最大の問題は、「潰れる恐れがある病院」を建てても、建設を決めた市長、議員は誰もいなくなっているので、誰一人責任をとらないことである。建てたその時から生じる「莫大な維持費」の議論こそ、慎重な対応が必要である。
安易に賛成する議員に物申す。議員は、市民の負託を受け市政をチェックすることが本来の役割ではないのか。市と議会は正面から議論し、建設を延長してでも病院の経営改革をまず成し遂げなくてはならない。病院の場合、大は小を兼ねるは成り立たない。建設コストが高くなり維持費も膨大になる。
初心に帰り、真剣に取り組まずして何が市民の代表であるか。市民は議員一人一人が、市立病院建設をどう考えているか知る必要がある。
議員の皆さん、冷静かつ真摯に考え直そうではありませんか。松本市の将来に禍根を残さないために。