新市立病院のあり方を考える市民の会

巨額な病院建設は市民生活に影響が出ないだろうか?

市立病院が表明した建設総額は、当初87億円であった。基本設計に進んだ段階で、124.7億円になり、資材、人件費他の高騰で当初の1.43倍に増大した。さらに、最近の物価急騰に伴い1.7倍の147.9億円になることが想定される。このうち1/2の費用を地方交付税から国・市の負担分として繰り出してよいルール(以下、「1/2ルール」という。)を適用するとしている。病院の自己資金は6億円なので、148億円-6億円=142億円の30年物建設起債(借金)を起こせば、銀行利息を1.6%と見込んでいるので利息は34億円になる。「1/2ルール」のもとで、病院は142億円+34億円=176億円の半分、88億円を毎年2.9億円30年間返済しなければならない。それが出来なければ、計画自体が成立しないのである。

しかし、「1/2ルール」が適用されるか否かは、国の認可が必要である。市立病院が国に命じられ作成した「経営強化プラン」は“絵に描いた餅”である。総務省や厚労省の判断が注目される。

市立病院は結局、起債(借金)を返済できないので、最後は市に負担してもらおうと考えているなら、とんでもないことである。国・市の補助金を充てると言っても原資が地方交付税である以上、松本市民の財産であることを忘れてもらっては困る。

市病院局長と財政部長はことの本質を知っているにも拘らず市政の屋台骨を揺るがす危険を冒している。また、市長がそれを容認していることは許されない。

2024年、松本市の総人口23.7万人に対し、西山地区(波田15,246人、安曇1,267人、奈川557人、梓川地区12,151人)は3万人弱の12.3%に過ぎない。ここに180億円の巨額な病院を作ることは異常である。

一方、23.7万市民の半分が納税者とすれば、建設費は1人当たり約15万円になる(180億÷11.9)。病院の赤字を年7億円とすれば、1人当たり年6千円弱(10億÷11.9)、30年間で18万円になる(6千円×30年)。市立病院を一生利用しない市民を含めて全市民が将来にわたって負担することになる。市は、「病院建設費と維持費を今の税金に加えて、わざわざ市民から徴収しない」と言うだろうが、主財源となる地方交付税や建設基金は市民の財産であり、平穏な毎日を維持する大切な財源である。赤字の垂れ流しが避けられない巨額な病院を建てれば、市の財政は確実に苦しくなる。夕張市が破綻した原因は病院建設であったことは今回の教訓である。財源は無尽蔵ではない。巨額の税金をつぎ込めば、残りの他のサービスに使用する財源は確実に減少する。

市立病院には、自分達の好き勝手にする権限はないはずである。計画の重大な欠陥は現在から将来にわたり誰一人責任を取らないので、負債は将来のつけとして先送りされることである。

市民は本当に、「これを良し」とし、納得しているのであろうか?