新市立病院のあり方を考える市民の会

議員はきちんと勉強して市政の間違いを正す責任があります

2009年、松本市議会が制定した議会基本条例は全国に誇れるものである。全議員が日頃から同条例を理解して尊重すれば、誰が市長になっても市政に混乱は起きないはずである。同条例を制定した趣旨は、そういうものではなかったのか。以下に条例を記載する。

第2条 議会は市民の代表として、次に掲げる原則に基づいて活動するものとする。

  1. (1)政策決定並びに市長他の執行機関の事務について監視及び評価機能を果たすこと
  2. (2)提出された議案の審議又は審査を行うほか、独自の政策の立案及び提言を行う
  3. (3)市民への説明責任を果たすとともに、議会活動への市民参加を推進すること
  4. (4)市民の意見を的確に把握し、市政及び議会活動に反映させること

第3条 議員は議会を構成する一員として次に掲げる原則に基づいて活動するものとする。

  1. (1)議会が言論の場であること及び合議制機関であることを十分意識し、議員間の自由な討議を重んずること
  2. (2)日常的に調査及び研修活動を通じて自らに資質の向上に努め、市民の代表にふさわしい活動を行うこと
  3. (3)議会活動について、市民に対して説明責任を果たすこと

地方議会は、民主主義の実験場と言われて久しい。自治体にあって二元代表制の一方である議会に重い責任があるが、各地で議会のチェック能力の低下が報告され、行政の不祥事が多発している。西山地区は松本市に合併した波田、奈川、安曇地区であり、人口減少が進み、高齢化率も旧市内より高い。ところで、人口減少と高齢化が進む町村では議員のなり手がない。市レベルでは地域や政党他の推薦によって議員のなり手はいるが、問題は良心的な議員がなかなか育たないことである。議員は、はじめは誰もが素人である。しかし、選挙で選ばれたからには間違ったことは決して許されない。行政と一定の距離を保って市民益のために愚直に活動するのが責務である。

病院建設特別委員会が専門家を招聘して「地方独立行政法人化」、「市立病院の診療実績」、「高齢化は予想以上に早まる」等、病院事業の症状と処方箋を聞かされてもその場限りである。議員は、経営の危機にある地域の病院の実態調査を誰も行わない。議会基本条例を無視する議員は「ノー天気」の一語に尽きる。急いで病院を建てたい市長と病院の暴走を諫めず、そして、新病院ができ経営難で破綻しても、彼らは“市長と市立病院が大丈夫と言ったから”、“自分は事実を何も知らされなかった”と言うであろう。そんな戯言は決して許されない。もっと怖いのは、松本市の職員が病院建設に関する国の動向や医療政策の転換や病院経営について何も知らないことである。地震の危険性についても、素人の管理者や市長の安全という考えに異を唱えない。正しい判断基準を持った職員が一人もいなければ、全てが病院の思い通りになるだろう。その結果、巨額な病院を建てても経営破綻する危険性は非常に高い。市民が議員に望むことを記載する。

  1. 議員の責務は、理事者が提案する政策をきちんと精査すること
  2. 議会は、松本市が実施している個々の事業の進捗具合と費用対効果を自ら調査・検証して是正や中止を勧告すること
  3. 会派は、そのための学習の場であることを自覚すること
  4. 議員は、議会質問のあり方を研究し、市政のためになる質問をすること
  5. 議員は、専門知識を持った有識者や市民との交流を欠かさないこと
  6. 視察旅行は、報告書で終わりにしないで、市政に反映させる方法を研究すること
  7. 議員は、社会情勢や国際情勢を学習して広い視野を持つこと
  8. 議員は、日頃から勉強しなければ職責を果たせない自覚を常に持つべきこと

松本市の皆様から現在の市議会や議員をどう見ているか、ご意見をいただきました。

市立病院建設についての疑問

  1. 先ず市民は首長・市議会議員に自分の生命財産を付託していることを認識すべきである。
  2. 付託された首長・市議会議員は自分の生命財産を投げ打ってでも、市民の権利を守る義務があることを自覚すべきである。そのことが伝わってこないのは、嘆かわしい限りである。
  3. ことをなす時、全てセオリーを逸脱してはならない。安易な道を選んではならない。現在の状況は犯してはならない道を進んでいるとしか思えない。
  4. 公共施設は災害を想定される可能性のある場所は避けるべきである。土砂災害防止を施行したから安全という考えは、真に幼稚そのものである。現在の場所は絶対に避けるべきである。日本は地震国の認識があるか疑問である。
  5. 病院の経営理念は机上の空論としか思えない。松本市の経済を支えている中小企業の経営者の苦労に敬意を表します。補助金(税金)で成り立っている市立病院の経営とは雲泥の差がある。病院にはその自覚が全く見えない。
  6. 今の子供達が大人になった時、安心して暮らせる社会を作ることが、我々のなすべきことである。
  7. 人口減少が進み、医療・福祉施設の倒産が増加しています。税金を当てにしない身の丈の病院を考えるべきである。
  8. 赤字病院で良いと誰も言っていない。自治体病院も独立行政法人になる自覚が必要である。主権者である市民の付託に応えるのが職員の務めでないか(元行政職員)。

歩いて十分足らずの処に信大病院がある。受診したことはない。優れて健康というわけでもないが、俗にいう町医者に恵まれた、生活指導も受けられる町医者との付き合いこそ健康を我が物にできる要因だと思っている。過疎地にも設備の充実した診療所を設け、町医者が交代で詰めるなどして町医者に恵まれる環境を実現してほしいと常々思っている(元市議会議員)。

多くの住民は中央運動広場に病院を建てることに反対だが、病院が無くなれば困ると考え沈黙していると聞いています。市長が街おこしに駅前を考え、中央運動広場の土砂災害防止工事を行ったが地震対策ではないようです。また、市議会議員が現地視察して危険、狭い、駅周辺整備に相当費用がかかると聞きました。しかし、一旦了承したことは撤回できないと考えているようです。患者さんと住民のために安全第一を考えるのが市議会の役割ではないでしょうか。規則にとらわれるか過ちを正すのか、答えは明らかです(市民)。

会社は良い製品を開発して社会に貢献することです。そのため人材の育成、モラルの向上、地道な研究、社会と株主の動向に常に関心を払っています。間違っても会社を潰すことがない健全経営することが社長の最大の仕事です。市議会にあっては、市立病院の建設は財政が成り立つか、社会規範に反していないか、市民に役立つかを議論しない限り失敗するでしょう(会社社長)。

市立病院の前身である波田総合病院は、市立大町総合病院と規模と環境が類似しています。違いは松本市には他に大きな病院があることです。両病院は総合病院を目指すも、少ない人口では経済的にも人的にも実現不能でした。今後、必要なのは高齢者対応の医療であって総合病院ではないと感じます。来院者の多くは波田地区周辺の方々と思います。
両病院とも慢性赤字病院です。人口減少と高齢化率が高くコロナ感染症拡大期後、患者は減少していると聞いています。市立病院がスリムな多機能型病院を作るといっても、スリムな多機能型はないので信じられません。巨額な病院建設は無謀で、明らかに市民への債務負担が増える構想です。賢明な議員の皆様の思慮と叡智で再検討をお願い致します(中小法人経営者)。

市長会見をもとに書かれた7月2日の「市立病院5年連続黒字」の新聞記事を見て驚きました。市民は市立病院の経営が健全だと勘違いしてしまいます。国はコロナ対策に膨大な補助金を投入し全国の病院が黒字化したが、その後、患者さんの病院離れが元に戻らないのと物価の高騰で、どこの病院も経営が苦しいと聞いています。事実を正確に伝えない新聞は役割を果たしていませんね。高齢者が多い夕張市が大きな市民病院を建て替え、財政再建団体になった話が頭をよぎりました(市民)。

厚労省による今回の「患者の重症度、医療・看護必要度」の要件見直しで、病院は急性期病床の維持が難しくなった。ベースアップ評価料と入院料の値上げで収入は増加するが、給与、光熱水費、*薬剤費、消耗品の全てが高騰し、決算は減収になっている(病院経営者)。

*注:国立大学病院長会議は2023年度決算を発表し、42大学中22病院が赤字で、費用が収益以上に増え増収減益傾向である。「非常に末期的、危機的な数字で、この状態が2、3年続くと経営破綻となり高度医療の提供ができなくなる」と強い言葉で窮状を訴えた。

新市立病院建設には不安を抱いている。新病院のコンセプトが曖昧で、どういう病院にしたいかという将来像が不透明だと思う。少子・高齢化が進行しているので産科・小児科のあり方を検討すべきである。また、85歳以上の超高齢者対策が無計画で、退院しても自立生活が出来ない状況を考えていない。市立病院が現状を踏襲するだけなら、凄く厳しい状況が訪れることは間違えない。また、市が考える病院建設が地域経済を活性化するとはとても思えない(病院経営者)。

2024年3月、あずさ監査法人が厚労省医政局の委託事業として2022年度の病院経営管理指標を報告した。それによれば、財務分析:黒字病院比率本調査において回答があった一般病院のうち、経常損益が黒字となった病院の比率は、医療法人立は67.2%、自治体立は71.5%、社会保険関係団体立は85.2%、その他公的立86.7%であった。なお、自治体立は一般会計からの繰入金が医業外収益として扱われるため、医業本体の経営状況は経常損益よりも医業損益の方が実態を把握しやすいといえる。医業損益が黒字となった病院の比率は医療法人立が44.8%、*自治体立が6.1%、社会保険関係団体立が14.8%、その他公的立が36.7%であった。国のコロナ補助金がなくなり、2023年度の病院の医業損益は、軒並み大赤字になっている。市立病院会計は、医業損益にしないと経営実態が正確に反映されない。5年連続黒字と宣伝しているが、本気で経営改革しないと本当に危ないだろう(病院勤務医)。

*注:市立病院の会計は、6年赤字であった高木病院長からブラックボックスである。2018年度、総務省に粉飾と二重帳簿で報告(懲戒免職相当)したことが露見しているが市も議会も追及しなかった。渡辺事務部長は“会計は病院独自で他の病院と比較できない”と述べるが、悪しき体質の温存である。会計に時効はないので全貌を明らかにしない限り赤字体質は改善しないだろう。

市立病院は放漫経営で毎年赤字を出しても松本市が補填してくれるが、自分たち民間病院であればとっくに潰れている(前病院長)。

国は地域の病院の役割と連携を重要視している。高齢者が増え急性期疾患が減少するので、急性期病院は高い技量やチーム医療を行わない限り患者は集まらない。コロナ禍後、全国の病院の80%が赤字である。患者が病院を選ぶ時代なので、中小病院は特徴を出さないと生き残れない。少ない診療科で特徴がない市立病院が「あれもこれも」出来るわけがない。病院経営の厳しさを度外視した議論は“百害あって一利なし”です(病院勤務医)。

人口構造や疾病構造の変化、コロナ感染症後の受診意識や行動は大きく変化している。また、自治体病院として非採算性の高い小児医療など政策医療を担う側面も忘れてはならない。さらに、万博開催や災害復興が影響しているので建築資材の高騰や建設業界の人手不足も追い打ちをかけている。そんな中で将来を見据えた病院建設計画を立てることは至難の業であろう、関係者のご苦労が窺える。現在の計画では総合病院化を目指し、建設費も嵩んでいるという。幸い松本医療圏には相互に医療をカバー、あるいは分担可能な多くの実績ある病院群が存在する。現計画のように救急・急病から慢性高齢者医療などの全ての医療を市立病院だけで完結する必要はない。財政的にも医療人材資源からもハードルが高すぎる。永続性のある健全経営と将来にわたる市民のメリットを充分考えた上で時代に即し、未来の医療事情の変化に対応可能な計画を市民、医療者、行政でよく相談して進めていただきたい。こども達の将来に負担を残すことのないように(小児科開業医)。

2024年6月の診療報酬の改定で内科を中心に大幅な減収になり、診療所の閉鎖や倒産が心配される。また、新規開業は難しくなる。国が医療を小さくしようとしているからである。こんな時、病院が足りている松本市に巨額な病院を建てる計画は尋常でない。市議会は世の中の流れをよく見て、正しい判断をして欲しい(内科開業医)。

市立病院は自分達のことしか考えていない。松本市に巨額な病院はもういらない。市立病院は補助金(税金)に頼るだけで経営ができていない。自前で建てるなら誰も文句を言わない。病院幹部は勘違いしているのでないか(開業医)。

新しい市立病院は旧波田町から引き継いだ負の遺産を如何に健全な経営基盤に乗せ、西部地区の医療拠点に据えるかが問われている。合併から14年、度重なる協議を経た今も明確なコンセンサスは得られていない。波田以西(波田・安曇・奈川)は17,000人で松本市の7.3%に過ぎない。果たしてここに巨大病院が必要だろうか。建設予定地とされる運動場は現状維持バイアスに囚われ、かつ地質的なリスクが払拭できない。私にはむしろ上高地線新村駅や中部縦貫道新村ICにも近い新村交差点付近が適しているように思える。アクセスの良さは増患と経営改善の一助になるであろうと考える。病院は地域の象徴でも地域おこしの道具でもない。近地建て替えを押し通すのであれば、病院規模と機能の大幅なダウンサイジングを図り、持続可能な「地域密着型病院」とすべく更なる努力が求められるのではないだろうか(歯科医)。

市立病院は基本設計の策定にあたりプロポーザル方式で業者を選定した。この方式は競争入札とは異なり、発注者の恣意が働けば何でもありになってしまう。①今回、市は4階建てで発注したが5階建で応募した意中の業者に決めた。狭い敷地には5階建が良いことを承知の上で、4階建てで応募した4社を排除したことになる。つまり具体的課題に反した提案書を提出した設計者が選定され、課題通り提案を行った設計者が不採用になっている。②判定した5人の内4人が管理者、病院長、事務部長、副市長である。評価審査側に建築系の専門家を入れるべきであった。選定に対し市議会議員から疑義が出たが、病院側は問題ないと答弁したことが報道されている。専門家の立場から市と市立病院は、建設事業で公平性を犯し、建設業界や市民の信頼を裏切ったことは間違いない(設計事務所代表)。

市立病院経営評価委員であった、松本市の税理士は自ら辞退したと聞く。病院側が経営指導に耳を傾けないことに驚いている。市の会計は企業会計、特別会計など一般と異なり複雑である。市議会議員は、財政の仕組みや貸借対照表を読みこなせない限り理解し難いと考える。そうは言っても、新設される建設事業では、建設資金が過大であれば市の財政に悪い影響を与える。市立病院が大赤字を出さないとする収支予想は、過去の実績と現在・将来の社会・経済情勢に大きく左右されるので、単に病院側が頑張れば健全経営ができるという説明は、一般社会では通用しない(税理士)。

菅谷市政下、市役所全体がこのままでは病院経営は成り立たないと判断し、新市立病院建設計画をそもそも基本計画の段階で凍結した。現市政では、経営改革を全否定する北野管理者の異常な考えに臥雲市長が異を唱えない、病院建設はまちの活性化につながるとする奇怪な論理のもとで、実施設計にまで進んでしまった。行政において、基本設計・実施設計にまで進んだ計画を止めた事例は、皆無に近い。だからこそ、止めること、変えることは、「真に至難の業」であるが、実施設計が行われている今こそが「止められる」最後のチャンスだと思う。次の段階は、建設予算の市議会承認となる。大阪万博開催を見る限り、建設予算は恐ろしく増嵩するだろう。もしも、市議会がその莫大な予算を認め、病院の放漫経営に異論を差し挟まないとすれば、「松本市さんは、お金持ちなのですね。では、交付税を減らしましょう」。この総務省判断が必ず行われる。市への国からの交付税収入は将来に亘って減少するだろう。加えて、市からの病院への税金投入額は年々増加(病院経営を見る限り、病院建設費の借金返済は、全額市役所頼みだろう)。イコール、全市民の使える財源が絶対的に減少。民間も行っている病院事業(行政のみが行っている事業でない)への「過度な肩入れ」によって、市政全体が揺るがされようとしている。永続的に続く危機に対し、大きく間違った政策判断に一刻も早く市議会議員全員に気づいていただきたいと心より願う。
繰返し唱える。今が「止められる」最後のチャンスだと(元公営企業職員)。

最後に、駅前の中央運動広場を病院敷地になぜ決めたかはQ5で詳しく述べた。
市議会は現地調査や波田の歴史を勉強しないで、市の提案である①新たに土地を買わないで済む、②広場の南斜面の工事をすれば安全、③市長の街おこしに病院を利用するだけで決めてしまった。安全第一を無視した市の提案自体が杜撰であったが、チェックする市議会も杜撰そのものであった。松本市の将来に期待は持てず暗澹たるものである。
病院建設は、労働者不足、人件費と資材費高騰の折、入札は困難を極めるだろう。市は建設費の増額で補正予算を連発することになるだろう。そもそも病院敷地選定の時点で、危険で狭い上に「建設の困難さ」という重要な要素を誰も考慮しなかったに違いない。上高地線を跨ぐ、傾斜のきつい進入路を用いて、あの狭い場所にどうやって5階建て用の骨材を搬入するのか? 県道の長期間通行止めと片側通行? 駅南の住宅事業所先行移転?「建てる工程」だけでも、これほどの反対理由が浮かびます。市民は、膨大な税金を毎年注ぎ込まないと潰れる病院を必要としていますか? 沈黙は金ではありません。
私たちができる市議会の覚醒は、勉強せず自分の都合で、市民のためにならない政策に賛成し沈黙する議員ではなく、松本市の将来を考え市民のために働く議員を議会に送ることではないでしょうか。