新市立病院のあり方を考える市民の会

市民は市立病院建設に関心を持ち危ない計画には反対の声を上げるべきです

市民は市立病院建設に関心を持ち、危ない計画には反対の声を上げるべきです。
国は少子高齢化・人口減少で国の財政も健康保険制度も危ないことを考え“医療を小さくする”方針に舵を切りました。病院や老人福祉施設の経営が厳しくなります。市立病院が経営改革をせず巨額な病院を作れば大赤字の連続で潰れるでしょう。

1.地方自治体の財政は逼迫しています

世界一の高齢化と人口減少が進む日本では、政策をつくるに当たり、何事も“人口減少”を中心に据えないと失敗する。
人口も仕事も圧倒に多い東京に、大企業が集中し財源(税金)が集まる。東京では、仕事、子育て、教育、産業振興の予算は莫大で、地方から若者(生産人口)が流出し地方都市はさびれる一方である。殆どの地方自治体の税収は少なく、国が配布する地方交付金でかろうじて運営している。国は東京と地方の市町村との著しい格差を是正すべく、国の機関や大企業を地方へ移転することを掲げたが、霞ヶ関官僚の抵抗にあい失敗に終わっている。“ふるさと納税”は自治体の返品競争を煽っているが、根本的な解決にはならない。さらに、ふるさと納税は高額納税者だけが利用できるもので、“ふるさと脱税” とすら言われている。
国は小泉政権では、「三位一体改革」の名の下で地方交付税を減らし、税源移譲により富める自治体がより富むこととなった。安倍政権では、人口減少に対し「地域創生」を掲げ補助金などで自治体を競わせたが、結果は移住者の奪い合いとなり人口減少や東京一極集中は、さらに加速している。これが日本社会の現状である。

2.地域の現状と松本市の財政を考えれば、巨額な病院はいりません

地方自治体は住民に安定したサービスを提供するため、限られた財源をどう有効的に振り分けるかが役割であり、創意工夫が問われる。
松本医療圏(3市5村)は医療資源に恵まれ、4大病院(信大、松本医療センター、安曇野日赤、相澤)がある。いずれも急性期医療、救急医療、専門医療をおこない、患者数も多く医療レベルも高い。波田にある市立病院は180床の中規模病院で常勤医がいる診療科は7科に過ぎない。病院の新築移転で180億円以上を費やし、巨額な急性期にも対応できる病院を建てても、高度医療や専門医療ができない病院が、熾烈を極める患者獲得競争に勝てるわけがない。
日本の医療政策は人口減少に対し、“医療を小さくする” のが目標であり、今やその最終段階に入った。多くの職員を抱え巨額な設備投資をしてきた病院が、人口減少、急性期間患者の減少、患者の受診控え、医療機材・薬剤・人件費・光熱水費・食物費他の高騰で支出が収入を大きく上回っている。2023年度の決算で全国の病院の80%、自治体病院の94%が赤字であることが明らかになり、今後さらに悪化することが確実視されている。特に注目されるのは、国立大学病院42病院中22病院が赤字で、この状態が2、3年続けば高度医療ができなくなると発表したことである。

3.北野管理者の大間違いと、市長がそれに同調したことで危険な方向に進んでいます

誰が考えても非常識な計画が、なぜ進行しているかを明らかにする。

  1. 経営改革を最優先することに反対する管理者を首にすべきであった。
    管理者は、経営改革を断行すれば医師と看護師が辞めるという理由で、改革絶対反対を主張した。今や全国の病院が規模の縮小と人員を削減しなければ、生き残れない時代であることを理解していない。
  2. 管理者本来の役割は病院の健全経営であって病院建設ではない。
  3. 建設基本計画の段階で実施すべき改革を骨抜きにし、急性期を主体にする計画にしてしまった。
  4. 管理者が描いた絵は、急性期主体の病院として出産から終末期まで診る、救急医療・政策医療・感染症対策・僻地医療をカバーするなど盛り沢山である。高齢者対策として「フレイル予防センター」を作るとしている。しかし、全てを30人の医師で行うことは困難である。
  5. 最近になり、高度医療や専門医療は他の病院に依頼するとしているが、27ある診察室や3つの手術室に代表される急性期対応の基本設計は一切変更しないと主張している。
  6. 国が命じた自治体病院の「経営強化プラン」に対し、規模は縮小せずに現状維持のまま収入を増やす計画を立てたが、過去の実績と今の医療状況から実現は不可能である。
  7. 病院が立てた経営予想は高齢者が増えれば病院の患者が増えるという説明であるが、根拠がない妄想であることは、厚労省が示した資料が示唆している。
  8. 建設資金は病院の寿命を30年と考え自前で返済するのが当然である。現在の予定額は180億円近くであるがその半額90億円としても、毎年3億円以上の売り上げが必要になる。今の病院でさえ不可能なことが、益々厳しくなる医療情勢の中で実現するわけがない。病院が建設資金の全てを市(税金)に依存するのであれば市の財政も、他の市民サービスを後回しにするという、重大な変質をきたすだろう。
  9. 地震大国日本は、危険な場所に建物(特に病院)を建てはならないのが常識である。
  10. 市長が街おこしに利用するため駅前にこだわり、その目玉として病院建設を急がせるのは間違いである。

4.杜撰な計画を理解出来ない市議会議員は危ない計画の片棒を担ぐことになる

2016年から開始された市議会の「病院建設特別委員会」を知る議員は、2回の市議会選挙があったため31人中21人である。各会派には市民の会から、今までの「緊急提言」を提供している。果たして何人の議員が読んで理解していただけたのか甚だ疑問である。7年近く市立病院建設を慎重に議論するように活動してきた我々「市民の会」を市議会に招聘すること を要求する。

市議会「病院建設特別委員会」は、どこで判断を誤ったか

  1. 2017年菅谷市長が招聘した「病院建設特別委員会(以下、同委員会)」は病院関係者と波田地区代表に加えて医療関係者から構成された。その提言は、「大きな病院」と「慎重な検討」の両論併記であったが、市は前者を採用した。しかし、議員は提言の意味を知らないし病院に関する知識は乏しく波田に建てる病院のイメージは、ばらばらであった。
  2. 菅谷前政権で、松本市は新病院建設について市全体で計画を精査した。その結果、杜撰な建設計画では経営は不可能と判断し、自ら計画を延期し病院に経営改革を厳命した。
  3. 市議会議員は、杜撰な建設計画と鉄工所跡地への病院建設を賛成している。しかし、計画の延期と市立病院への経営改革厳命には関与していない。
  4. 2022年、臥雲市長が招聘した「専門者会議」は国の医療政策と病院経営に長けた医療関係者からなり、前政権の反省を踏まえた新たな提言をした。それは、経営・機構改革に取り組み、国の方針に沿った規模縮小と高齢者のフレイル対策を先取りしたものであった。
  5. 同委員会の村上委員長は基本計画の審議を9人(定数16)、5:3で了承(議決は取らない)した。委員会が結論を急ぐ理由はなかったのではないか。
  6. 基本設計業者の選定に疑惑があった。市議会一般質問で議員が疑義について質問したが、管理者は何にも落ち度はないで済ませた。万一、官制談合があったとすれば該当業者ははずされる。さらなる議会の追及が必要であった。
  7. 病院の経営強化プランと経営予想が杜撰で楽観的であることから継続審議となっていた。事務部長の “頑張れば可能” という言葉を信じた委員が多数だったため、同委員会の芝山委員長はやむなく経営強化プランを了承した。現実世界では精神論や夢物語でなく実績こそが全てである。委員の非常識な考えと行動には呆れる。
  8. 同委員会では実施設計に係る予算の承認に対し、委員が「市民の会」のホームページの案内を基に質問したが、村上委員長は了承を急いだ。まず委員の発言を聞くべきではなかったか。
  9. 重要な節目で、委員の追求が甘いことは一目瞭然である。委員達は “医療・病院建設は難しくて分からない”という。そうであれば、判断基準(ベンチマーク)を身に付けるため、なぜ、医療と病院経営、建築、地質関係、法律、波田の歴史を専門家に聞いて勉強しないのか? そこまでするのは議員の仕事でないと言い切れるだろうか? もし知識を持ち合わせていなければ、病院の提示する誤った考えや不正確なデータに対して正確な判断は下せないことになる。仮にそんな議員が多額な税金を使う大型事業に関わるとすれば、彼らに市の財産や未来を託すのは危険ですらある。

5.市と市議会は誰一責任をとれる立場に留まらないので、結局未来の市民が負の遺産を背負うことになります

30年後、市立病院問題を検討した関係者は殆どいなくなる。破綻するのが分かっている巨額な病院を建ててどうするのか? 今、私たちに今出来ることは、無謀かつ余計なことをして子供達の将来に負の遺産を残さないことである。市立病院は「安全な場所に身の丈に合った病院を建てる」ことに尽きる。
市民が無関心を装い、黙っていてば危険な計画が進行して恐ろしいことになります。