新市立病院のあり方を考える市民の会

豪華で広い巨額病院ですが、高度医療や専門医療が出来ない普通の病院です

では病院が潰れるわけを説明しましょう。

  1. 日本は世界一人口減少が進み、最悪の場合100年後には半分になります。地方の人口減少はもっと早く、2万人弱の西山地区も例外ではありません。若年人口が減り、高齢人口が増えれば健康保険制度も破綻します。
  2. 国は医療を縮小するために、世界一多い日本の病院を少なくする方針です。松本地域に4つも大病院があるので、市立病院の役割は主として高齢者の病院です。この時勢に、急性期疾患にも対応しようとする巨額病院を今から建てることは国の医療政策と正反対になります。西山地区の基幹病院だからといって180床の中規模病院に出来ることは限られています。これといった診療の目玉のない病院に患者さんは集まりません。
  3. 全国の病院が病床削減と人員削減に向かっています。管理者は「病院を縮小すれば医師・看護師が退職して潰れる」と猛反対し、赤字の原因である経営改革を行わず現状維持のまま新病院に移行する考えである。市長は「巨額病院」が波田の経済に役立つと考え同調している。病院の暴走を監視する役割の病院局長が事務部長を兼任し、改革をためらう職員は巨額病院建設に賛成している。巨額病院を作り患者が増えれば安泰と考えているなら、そんなことは絶対にあり得ない。人口減少、医療縮小政策、病院の窮状を全く知らない議員は、波田に建てる病院の意義が分からないまま賛成しています。このまま進めば、大赤字が続いて潰れる「巨額病院」を作ることになります。
    新潟県に11の病院を持つ厚生連は病院経営の優等生でした。それにもかかわらず2023年度は36億円弱の赤字で、2024年度は60億円に増える見込みである。資本が枯渇するので病院の縮小が必要であると7月11日に発表した。
  4. 総務省は、自治体病院の97%が赤字なことから、病院をスリム化する「経営強化プラン」の提出を求めています。警告されている赤字体質を改善しないで、建設を急いでいます。患者を増やし収入を上げれば問題ないという方針は実現不可能です。こんなでたらめな計画を国が認めるとは思えません。
  5. 病院建設で最も重要なことは、建設費(建設費+設備費)の上限を見定めることです。病院の医業収益(診療報酬+その他収益)の1.2~1.5倍がその上限であり、それを超えると赤字で潰れてしまいます。当然、建設起債(借金)が返せなくなります。市立病院の医業収益は40億円なので48億円から60億円が建設事業の上限になります。
  6. 2021年の日本病院協会の調査で、救急病院のICU病床は1床当たり3,700万円、一般病床は1床当たり2,440万円でした(総事業費から推定)。現在の市立病院の総事業費132.6億円(建設費124.6億円+医療機器他・什器代8億円)÷180床=7,366万円が1床当たりの金額です。2021年の1床当たり2,440万円の3倍という、信じられないほどふんだんに金をかけた建物にしようとしているのです。市立病院のICUは4床なので殆どが一般病床です。2024年では若干値上がりしても、2.440万円×180床=43.9億円が妥当な総事業費です。
  7. 現在示されている建設費124億6,000万円は、適正な建設費の上限である60億円の2倍強です。この金額では、はじめから潰れる病院をつくることになります。市が建物を建てる場合、市財政部は、他市で建てられた類似建物の建設費・面積実績を、それもなるべく沢山、担当部局に提出させる。それが予算査定の基であり、セオリーである。セオリーから外れたこの金額が議会に示された理由は、市長案件・病院案件だから「無査定」なのか。それとも「無能」だからなのか。潰さないため市は30年間(耐用期限)、維持費として10億円近い税金を毎年補填し続けることになります。他の事業を抱え、いつまで市の財政が持ちこたえられるかです。
  8. 建設費の詳細な金額は明らかにされていませんが、27も診察室がある広い外来スペース、症例が少ないのに手術室は3室、広い検査スペース、個室は全病床の50%、それに加えてクリーンエネルギー用の発電施設、全館冷房設備、耐震設備他などが盛り込まれています。180床の中規模病院としては、広すぎ豪華すぎます。本当に必要かは一切検証されておらず、病院の言うなりになっています。注;外科医師の成り手が少ない。今後、手術が出来る病院に患者を集中させなければならない事態になっています。
  9. なぜこんなことになってしまうのか? 行政が作る箱物は「初めに建設ありき」だからです。市立病院が意中の設計業者に、あれもこれも欲しい、将来に備えたいと要求した結果が基本設計の中味です。厳しい医療情勢や将来の予測、波田における中規模病院としての役割、現在の経営状態、国の医療政策を全て無視するからです。西山地区の基幹病院だということを理由に、ここで医療を全て完結したいという強い願いが根底にあるのでしょう。そして、それが過剰設備にも表れています。管理者は基本設計を一切変更しないと強弁していますが、このままでは白紙撤回しかないでしょう。
  10. 厚労省は、コロナ禍後の患者動向は外来・入院患者とも減少すると発表しました。市立病院の外来は9%、入院は5%減少しています。高齢者対応病院の主な役割は、高齢者が健康で安心して生活できるようにサポートすることです。それには豪華で広い病院は不要です。医療の質と親切な対応が不可欠であり、来院出来ない病弱者には往診や介護で寄り添うことです。高齢者は持病の悪化が主な病気となります。誤嚥性肺炎、尿路感染、脱水、心不全、圧迫・大腿転子骨折、そしてコロナに代表される呼吸器感染などが対象でしょう。
    残念ながら、骨折手術以外の治療費が低く抑えられており、介護予備軍を減少させることが明らかなフレイル対策は、まだ保険適用されていません。市立病院に求められている医療内容に収益が増える要素はどこにもありません。
  11. 病院の収益では、自治体病院の97%が赤字です。巨額病院を建てさえすれば増収が可能という「ノー天気」な予想はあり得ません。市長はコロナ禍でも市立病院は3年連続黒字だったと発表しましたが、これはあくまで国の補助金を加えた帳簿上の黒字に過ぎません。あたかも健全経営ができているかのように宣伝し市民を騙すのは悪質です。
  12. 厳しい医療情勢の中で“生き残れる病院は何か”を考える必要がある。そのヒントは、Q14の松坂市民病院の「病院のあり方」にあります。
    ①西山地区の基幹病院として、全職員がこれからの病院の役割は何か真剣に考えることですが、その気概はありません。②病院を潰さない経営は、ア.粉飾・改ざん・赤字を隠さない。イ.数字は実績に忠実なので虚偽の経営予想をでっちあげずに、精神論(頑張れば出来る)を振り回さない。ウ.全て税金で成り立っている病院を自覚する。エ.経営・機構改革をしないで市立だから市が赤字を補填するのが当然だとする考えはおかしい。オ.大赤字の垂れ流しになる巨額病院は作るべきではありません。
  13. 病床稼働率にこだわり、不要な入院を増やし退院を遅らせれば、病院の評判は落ちます。
    医療事故は避けられませんが、患者さんの安全管理を徹底することが肝要です。
  14. 今やいつどこで地震が起こってもおかしくない時代である。波田で最も危険な場所に病院を建てることに病院職員が沈黙しているのは異常です。彼らに、本来果たすべき医療者の役割とは一体何か改めて問いたい。市立病院の先輩が皆、安全な場所を望んでいたことすら忘れている。
  15. 波田の安全な場所に、国が求める「地域密着型病院」を建てるのが解決策です。
  16. 折角時間と経費をかけてきたのだから、今更変更・撤回などのような後戻りはできないと考えるのは本末転倒です。来年は、80年目の終戦記念日。「引き返すこと」の意義に深く思いを致すものです。
  17. 最も大切なことは、巨額病院は医療関係者が長年構築してきた松本医療圏のバランスを崩し、多額な税金を浪費し松本市民のためにならない。この真実を知り、一日も早く有識者会議の「提言」まで引き戻すことです。医療界の動向と市立病院の経営を5年間見てからでも遅くはない。
  18. 7年間の活動で分かったことは、松本市が行う大型「事業」の検討方法に重大な欠陥がある。市は「病院建設特別委員会」の設置前に有識者による専門者会議で「提言」(基本的な考え)を策定する。しかし、専門家の役割はそこで終わりである。「提言」の採用は市の随意である。16人の議員による「〇〇特別委員会」で検討されるが、「事業」の関係者や専門家が参考人として呼ばれることはない。後は、専門的知識を持たない、素人同然の市職員と市議会議員に全て判断を任されるのである。その結果、専門家の「提言」は無視され骨抜きにされ、市長や担当部局の思惑どおりとなる。
    松本市は、専門者会議の提言を第一に尊重しなければならない。松本市議会の特別委員会は、必要に応じて専門家他を特別委員会に招請する必要がある。
  19. 病院を建てる場合中心となるのは、あくまで病院長である。コロナ対策で忙しいなら中断できたはずである。病院の歴史や現状を把握しない北野管理者に全権を任せることはあり得ない。管理者の役割は経営を監視して指導することだからである。
    8月17日、中村前病院長と電話で①病院建設地は駅前で本当によいかに対し、“自分はずーっと反対してきた” が市議会で決まった以上仕方ない。②「経営強化プラン」はでたらめに対し、“市議会で了承され、市を通じて総務省に報告した”。経営予想は誰が見ても杜撰ではないか。“その話は結構です、自分はもう経営と関係ない” と言って、一方的に電話を切られた。危険な場所に納得していなくても、職員をまとめて反対しない。「経営強化プラン」がでたらめであることを分かっていても正さない。何もしないで全て市議会の責任にしている。まさに、統治がなくルールを守らない市立病院を代表している。