医療は「病院医療中心」から「在宅医療中心」に変わった。国の方針に反し実績がない小病院が大風呂敷を広げても赤字が続いて潰れる。江戸落語の登場人物に松本藩のドタバタ劇を、誰にでも分かるように話してもらった。
- ホーム
- 緊急提言
- 医療は「病院医療中心」から「在宅医療中心」に変わった。国の方針に反し実績がない小病院が大風呂敷を広げても赤字が続いて潰れる。江戸落語の登場人物に松本藩のドタバタ劇を、誰にでも分かるように話してもらった。
市立病院建設の真相に迫る
1.はじめに
医療が目指すのは病める人を救うことで昔も今も変わらない。しかし、時代と社会の変化で、病院の役割が大きく変わった。世界一の少子高齢化と人口減少が急速に進む日本は、従来の医療・福祉制度が保てなくなっている。地域において全ての病院が急性期から慢性期の患者を診るのでなく、病院の規模と能力に応じて、役割分担を明らかにし連携することになった。さらに、増加する高齢者に対応するには医療の価値観の転換が欠かせなくなり、国は「病院中心医療」から「在宅中心医療」に大きく舵を切った。
医療改革の根幹が分からない市立病院、松本市、市議会は新市立病院建設について、従来型の金をかけ大きく立派な建物で重装備しておけば間違いないと思っている。しかし、小さい病院が大風呂敷を広げても、全て税金頼りで経営を考えなければ生き残れるはずがない。新病院は大赤字で潰れてしまう。
『市民の会』は、「緊急提言」や「ホームページ」を通じ7年前から国の地域医療構想と住民のニーズに合った病院を建てることを発出してきた。
今再び、管理者の「巨額病院」にする考えと、市長の「箱モノ病」によって病院建設は非常に危険な状態にある。
波田周辺の以外の市民は、市立病院には行かない。医師もあまり患者を紹介しない。新聞は真相を伝えないので市民は関心を示さない。市議会議員が賛成し、市民が無関心でいると、せっかく建てた新病院は潰れて市の財政に大打撃を与える。そこで、江戸落語の主人公である「大工の八五郎」「何でも屋の熊五郎」と「ご隠居さん」「大家の幸兵衛さん」「寺子屋の甚内先生」「医者の良庵先生」「八五郎の女房清女」「八五郎の妹お鶴」に、誰にでも分かる話をしてもらった。
2.江戸庶民は松本藩のドタバタ劇をみて呆れ果てている
八五郎
熊さん、市長が大枚を叩いて波田に病院を建てるのを知っているかい。
熊五郎
何で大枚(大金)を使うんでー、八五郎兄ぃ。
八五郎
市長は松本藩のお殿様だから何でも出来ると思っているのさ。
大家
市長様は赤門学問所のご卒業だから、任せておけば間違いない。
八五郎
べらぼうめ、俺たちの年貢だ、家賃を巻き上げる大家と一緒だ。
ご隠居
まあまあ、八つぁん熊さん、穏やかに話しとくれ。
八五郎
良庵先生、何か聞いていることはありやせんか。
良庵先生
わしの患者の議員によると、市長は医療や病院経営の専門家を招いて、国の方針と社会情勢にあった「提言」を策定してもらった。先ず経営改革を行い、病院を縮小することを市の方針にしたと聞いている。
甚内先生
ところが、病院管理者が「経営改革して病院を小さくすると医者と看護師が辞めて病院が潰れる」と記者会見をして猛反対した。
現状維持で何でも診る病院にすれば、経営は安泰と言うおかしな話で職員をまとめたと聞いている。世の中の動きと真逆である。
八五郎
べらぼうめ、職員にとってはうめえ話しだが、赤字べらしで呼んだ管理者が経営改革に反対するなら、野郎を首にするのが当たり前じゃねぇか。経営改革をやらねぇで新病院建設たー、どういう了見だ!
良庵先生
何でも、管理者の代わりがいないからやらせたらしい。
熊五郎
市のやることは、筋が通っていねぇー。無茶苦茶だ!
甚内先生
拙者も市の職員から、市長のご先祖様が波田の出だから波田に思い入れがあり、それが強く影響していると聞いている。
八五郎
何の力もねえ管理者が、お上のお触れになんで背けるか分からん。
熊五郎
虎の威を借る狐っていう奴ですかい。
良庵先生
わしも、初めは分からなんだ。今は、管理者が市立病院、市長、市議会の全てを騙したと考えとる。管理者が「コンパクトな地域密着型病院を目指すとし、経営マインドを盛り込み、全人全人生的医療の提供を行える多機能体制を構築したい」と言うのを聞いて、はたと気づいた。管理者の経営改革は唱えるだけ。小さい病院が大きい病院の役割はできない。しかし、管理者は波田に、何でもできる急性期を主体にした病院を建てたいと考えている。
甚内先生
北野管理者の経歴は信大病院から松本医療センターなので、大きな(総合病院)を絶対化している。中・小病院経営の経験がないので人口減少・経済悪化・国の医療政策を相対化して考えることが出来ないのであろう。
良庵先生
歪んだご都合主義は本当に始末が悪い。周りを全て腐らせる。
八五郎
口じゃー、小せぇ病院って言っていやがるが、でけぇ玄関と客間と豪勢な南蛮カラクリをぶち込んだ中身に変えちまうなんざ、「騙り」の手口そのものだ。先々に変えるって言いやがるが、病人もお医者も看護する人も減るのに、波田の病院が何もしねぇのはおかしなことだ。
ご隠居
ところで良庵先生、病院は儲かっているのですかえ。
良庵先生
どうも、そうではないらしい。長い間、毎年赤字を出して市が税金で穴埋めしている。赤字の原因は職員が多く給与が高いらしい。
熊五郎
冗談じゃねぇ、赤字病院が高い給金を払うとはどう言うことだ!
甚内先生
今日、どこの病院も赤字で潰れる恐れがあれば、支出を減らすのが当然なのに、波田の病院が何もしないのはおかしなことだ。
ご隠居
ずいぶん変な話だねー。市議会の先生方はどう考えているかね。
甚内先生
反対する議員もいるが、病院案を無条件で賛成する議員もいる。
賛成派は「見ざる、言わざる、聞かざる」の「三猿」で審議に加わらないで数で決めようしているらしい。
八五郎
市議会議員は病院の間違いを正すのが仕事じゃねぇか。日光東照宮の「三猿」を真似た!上等じゃねぇか。だがな、人間は猿じゃねぇ。見て、聞いて、言って、考えてじゃねぇか、市民をなめるのはいい加減にしてもらいてぇ!
大家
まあまあ、議員の先生にも都合があることだから。
八五郎
べらぼうめ、大家はいつから議員の親戚になったんだ!
熊五郎
八五郎兄ぃの言う通り、バッジをつけて先生と呼ばれりゃー、偉れぇと思うだろうが、大間違いをすりゃー江戸っ子の恥だ。
ご隠居
瓦版はなにも書かないので、庶民はつんぼ桟敷に置かれている。甚内先生、何かご存知ですかい。
甚内先生
議会の「病院建設特別委員会」は病院のあり方(基本計画)を5:3で了承、基本設計業者の選出に不正があったが了承。でたらめな経営予想は、病院事務部長が“頑張る”というので了承。実施設計も入札を了承。どうも委員は医療や病院について素人同然で、判断基準を持っていないので、反対しても病院に丸め込まれてしまうらしい。
良庵先生
管理者は、専門医療や高度医療や高度の救急は出来ないから、他の病院と連携すると言った。しかし、基本設計は、本来の回復期ではなく急性期のままである。診察室が27ある広い外来、広い検査室、手術患者が増えないのに三つの手術室がある。管理者は絶対に変えないと言うが、建ててしまえば、もう変更は出来ない。
熊五郎
あっしには、病院の役割や銭のことを考えねぇで、管理者が好き勝手しているとしか思えねぇ。
八五郎
べらぼうめ、重病や難病を引き受けることが出来ねえ小さい病院が、銭のかかる病院を作りたがる。やってることは「騙り」と一緒じゃねぇか!
熊五郎
玄人(病院)と素人(議会)が話して決めるなんざー無責任で、市のやることじゃねぇ。
八五郎
はなから勝負は決まっているじゃねぇか!
良庵先生
専門者会議は「提言」を策定して終わり。病院が2回とも違う内容に変えてしまった。最後まで専門者会議に仕切ってもらうのが、筋だと思う。
ご隠居
ところで、病院が出来れば、経営は順調にゆくのかね。
良庵先生
コロナの後から庶民は病院に行かなくなった。病院は入院や外来患者の減少で、支出が収入を上回り、全国の8割の病院が赤字なので、ずさんな経営をしている病院から行き詰まるだろう。
ご隠居
わしは身体が丈夫で病院に行かないが、波田の病院はどんな病院かのー。
良庵先生
郊外の普通の小さい病院で、難しいことや新しいことは出来ない。
熊五郎
確かに、赤ん坊や若い衆が減って、年寄りだらけの世の中になっちまった。医者達はこのままじゃ、病院の先行きを心配するわけだ。
八五郎
熊さんの言う通りだ。ゴリ押しして贅沢な、でけぇ病院を建てても病人が行かなきゃー赤字続きで潰れちまう。潰れねぇよう毎年年貢を山程注ぎ込まれたら俺らが困る。波田は、分相応な病院でいいんじゃねぇか。
熊五郎
波田の病院が帳簿を誤魔化して年貢を無駄遣いするとなりゃー、一揆だ!「打ちこわし」だぜ!
甚内先生
議員の話だが、市立病院が経営努力をしないで赤字なので、お国は「経営強化プラン」を命じたそうだ。波田の病院は支出を減らさないで収入を増やす計画を立てたが、どうも黒字にするのは難しいらしい。
良庵先生
建築資材や人件費がまだ上がるので建設を中止した病院もある。
慢性赤字の病院が建物だけで125.7億円はバカ高いと思う。
大家
市長様は赤門出で偉いから、何か方法を考えているじゃないのかね。
八五郎
また市長かよー。巨額な病院なんぞ建てる時じゃねえ、何で議員も大家も、管理者がでたらめやっているのが分からねぇのか、嫌になるぜ。
清女
おまえさん。お鶴ちゃんに子が出来たらどこの病院がいいかねぇ。
お鶴
私は、安全にお産ができるところで、出来れば家に近い方がいい。
清女
親だったら波田の人間も同じことを考えると思うよ。
八五郎
病院がお産をやめると言い出し、地元が反対して元に戻したことがあったが、よく分かんねぇ。
良庵先生
地元の反対が強く、信大病院が産科医師を1人出すので市が折れたのでないか。松本市が政策医療といって持ち出す金額は大きい。
熊五郎
松本市と安曇野市の大病院は数10年前に産科を辞めた。赤字病院が大赤字になる産科をなぜ残すか素人には分からねぇ。良庵先生なぜですかい。
良庵先生
異常産で児を死なせると親から訴えられるので、町医者はお産をやめた。産科医の成り手がなく、病院は危険防止のため複数の産科医と小児科医、10人の助産師でチーム医療を行う。1億数千万円の経費をかけても100件のお産で5千万円にしかならない。これじゃー政策医療と言っても、全て市の持ち出しになる。
熊五郎
平たく言やー慢性赤字病院は産科を持てねぇと言うことですかい。
ご隠居
松本と安曇に産科が6カ所あると聞くので、車で30分以内だから妊婦に我慢してもらい、女性議員にも分かってもらうことじゃろう。
わしは、政策医療なら子育て支援に金を回した方が良いと思う。
八五郎
俺らは波田でも仕事をしたことがあるが、駅前の中央運動広場は狭い。地震で陥没した窪地で南北に脆い河岸段丘の中段に農家が大事にしている「農業用水路(波田せぎ)」があると教えられた。地震が起これば病院を建てる場所じゃねぇことは、誰にでも分かる。
熊五郎
駅に向かう急な坂道も危険だが、病院の職員はなぜ反対しねぇのか。
甚内先生
職員は、今の病院の場所にも反対してきたが、町役場に押し切られた。多くの職員は反対だが、管理者が反対すれば市は病院を建てないと話し、職員は仕方なく黙っていると聞いている。
良庵先生
人の命を預かる医者や看護師が、そんなにやわな人間では困る。
強く反対していた前病院長は、なぜ沈黙してしまったのか。
甚内先生
市長は中央運動広場の南斜面は土砂崩れ防止で安全になった。
病院建設を止める法的拘束力はないと断言したと聞く。
良庵先生
波田町と合併した後、松本市は現在の病院が危険区域に当たるので、南側に大掛かりな防災工事をした。ところが、運動広場も同じ危険区域になるが、南側は住宅地になっており本格的な工事は出来ない。
今回の工事はお茶を濁した程度で、担当課長は地震対策ではないと言っている。恐らく、市長は現在の病院の工事について知らない。波田の歴史も、「農業用水路(波田せぎ)」の重要性も分かっていない。
甚内先生
拙者は子供たちに地震・雷・火事・親父の怖さを教えている。市長が現地をよく知らないで、地震を無視して嘘をつくなどもっての外だ。子供たちには、嘘をつくなと厳しく教えておる。
大家
大家といえば、店子の親も同然。市長の役目はそれ以上だ!
八五郎
よく言った。それでこそ、大家だ。
熊五郎
八五郎兄ぃの言う通り。
良庵先生
波田の病院は180床の小病院なので、主として回復期の病院である。
管理者はそこを捻じ曲げ何でも出来る急性期主体の病院を作ろうとしている。松本地区は大・中病院と専門病院があり、長野県で一番充実した地域だ。管理者は無謀なことをやるべきでない。
甚内先生
日本国は、少子高齢化と人口減少が予想以上早く進んでいる。波田・安雲・奈川の人口は合わせて1.7万人弱で松本市の人口の7.3%である。ここに巨額な病院を作る大義名分はどこにもない。
良庵先生
長屋を含め、庶民が関心を持ってくれなきゃ、周り回って皆の衆に迷惑がかかり心配だ。
八五郎
最近、瓦版で市立病院の当期純利益3億7200万円で5年連続黒字てぇ記事をみたが、どういうこった?
熊五郎
俺らは信じねぇ。慢性赤字病院が黒字になるはずがねぇ。
良庵先生
流行り病のコロナ対策で、国から16.8億円もらっている。市の補助金もあり帳簿上は黒字になっているだけで赤字は変わらない。
熊五郎
それじゃー赤字を隠して病院の経営は安泰だと、市民をだましたことになる。管理者も市長も必死だねぇ!
甚内先生
瓦版に今年の波田の病院の上半期5ヵ月の外来患者は減ったが、入院患者は同時期より5,467人増え、病床稼働率は91.7%だという。
良庵先生
わしも読んだ。年間の新入院患者3千人台の病院が、上半期で5千人増えることはおかしい。どうやって199床に入院させたか?何か「からくり」があるはずだ。
良庵先生
患者の退院を数日遅らせたのではないか。委員会は、病院事務部長に詳細を説明させるべきだ。
熊五郎
何で、そんなことをするか分かんねぇ。
良庵先生
病院事務部長が委員会で、病床稼働率を上げて収入を増やすと大見栄を切ったと聞いている。
八五郎
それじゃー、議員は肝心の収入が増えたか聞くべきだ。患者の退院を遅らせて病床稼働率を上げるなら、そんな病院は最低だ。
熊五郎
経営予想は全て嘘で建設どころの話じゃねぇ。管理者は誰のために病院を作るのか、肝心なことを何も分かっちゃいねぇ!
ご隠居
ところで、病院を建てる費用はどうなっているのかね。
良庵先生
年間の売り上げが40億円の病院は1.5倍の60億円が限度額でそれ以上になると借金は返せない。125.7億円は無理な額だ。駒ヶ根の病院は131億円から167億円(1.6倍)に値上がりして中断した。
ご隠居
それじゃ、はなから無理な計画だ。
八五郎
管理者は財政を考えねぇで、無茶苦茶をしている。
甚内先生
賛成する議員は、市長が国に頼べば助成金が出ると思っているが、国は地方のデタラメに金を出さないので、全額市が出すことになる。
甚内先生
「建設起債」として建設費の半分の63億円を病院の売り上げで30年間市に返すことになる。毎年赤字の病院が年2億円の返済は不可能。殆どの議員は肝心なことが分かっていない。
良庵先生
病院運営は自力で行なうのが普通である。特別扱いの波田の病院は年4億円の赤字を税金で穴埋めしてきた。市病院局長=病院事務部長は、新病院では7.7億円になる予算を出している。10年で77億円になる。こんなことを考えるのは、財政を考えない者がすることだ。もし、事務部長が「建設起債」を医業外収益(助成金)に潜り込ませれば、総務省の繰入規則に反することを議員は知っているであろうか。
甚内先生
助成金について議員に聞くと、2021年12.8億円、2022年11.5億円、2023年7.7億円注ぎ込んでいる。一旦、4億円弱になるが、その後は7.7億円が10年以上続く。市長の5年間黒字は大嘘だ。
ご隠居
お天道様は、見ていなさる。上に立つ者が強引にことを進めようと平気で嘘をつけば、物事はうまく運ばなくなるものだ。
八五郎
べらぼうめ、特徴がねー小さい病院を金のかかる病院にしても病人がいかなきゃー潰れちまう。赤字の穴埋めに膨大な税金を注ぎ込んでいる。議会さえ丸め込めば何とかなると考えるなんざー、許せねぇ。
ご隠居
八つぁん熊さんが怒るのはもっともだ。
ご隠居
ところで甚内先生、良庵先生、市役所はどうなっているのかね。
甚内先生
市の大型事業は財政、建設、健康福祉、危機管理が関係する。しかし、「市長案件」だから病院局案に一切口を挟まず沈黙している。
ご隠居
「病院案件」をチェックする役人が、そんなことじゃ駄目だ。
八五郎
べらぼうめ、役人も「三猿」か。一体、何てーこった!
熊五郎
潰れてもおかしかねぇ病院が、お国の方針や専門家の意見を無視して巨額病院とは、一体どう言う了見だ。誰にも分かるでたらめを許す役人はからっきしだらしがねぇ。松本市民はかわいそうだぜ。
良庵先生
財政部は、前回の総務省への粉飾報告と今回の過剰な建設とでたらめな経営予想、建設部は、資材・人件費の高騰、危機管理部は、危険な建設場所、健康福祉部は、地域医療構想と病院運営に深く関係している。分かっていて黙っているのは、市民に対する背信行為だ!
甚内先生
巨額病院と助成金が続けば、松本市の財布に大穴が空くことになる。
良庵先生
波田総合病院が合併で、2012年から松本市立病院を名乗ったのは、間違いだった。何故なら利用者は主として波田地区周辺住民だからである。同病院は1948年国保直営診療所から6回名称を変えているので、別の名称を名乗るべきであった。
甚内先生
拙者も思慮が足りなかったと思う。何より市立といって肩肘張らずに 済むし、松本市も超特別扱いしないですむ。
ご隠居
両先生の話で松本の医療施設は足りている。人口が中心部より早く減る波田に巨額病院を作るべきでない。赤字で助成金は増え「建設起債」は返せない。しかも危ない上に、狭い場所に無理して建てることは、波田住民や市民のためにならない。市民に経緯を正しく知らせないのはもっての外だ。建設費が高騰している。議員の先生は、失敗したら誰がどう責任を取るか、考えたことはあるのか?市の職員も議員もしっかりしなくちゃ困る。一旦凍結するのが、真っ当ではないか。
熊五郎
さすがご隠居だ。言うことは亀の甲ですぜ!
ご隠居
熊さん、それを言うなら年の功だ。
甚内先生
役所は、一旦決めたら間違っていても進めることがある。
良庵先生
そんなことをしたら、波田の病院は潰れてしまう。
八五郎
べらぼうめ、江戸っ子は曲がったことはでえぃ嫌えだ。八五郎は泣き寝いりなんぞしねぇ。
熊五郎
よう!さすが八五郎兄ぃ。
ご隠居
市民が関心をもち、議員に心底、真剣になってもらわにゃなるまい。
3.まとめ
市民から“医療と病院は難しくて分からない”とよく言われる。当の医師も目まぐるしく変わる政策に戸惑っている。国の狙いが医療費の削減にあることは間違いないので、病院の役割は国に羈束(きそく)される。
医療は人口動態、経済情勢に密接に関係している。医師の役割は地域の医療を守る最善の道を求めることである。人が生活して行くのに医療は欠かせない。
人は多くのしがらみに縛られて生活している。しかし、医療は病める人を助け寄り添うことであり、そのための病院や診療所である。市立病院建設は、波田地域の病院が果たす役割が問われている。それは、増加する高齢者と一般診療であって、専門医療や高度医療や高度救急ではない。松本地域は県内で最も医療施設が充実している。建物だけで125.7億円の巨額な病院を作る理由はどこにもない。市立病院は、医療者の提言である「身の丈に合った病院」を2回拒否して自分達の病院を作ろうとしている。なぜ、無謀な考えで医療の現場を知らない行政を騙して巻き込むか! 本来、そんな権限はどこにもない。
口は悪いが曲がったことは大嫌い。人情脆いがお上の横暴には抵抗する江戸庶民に、松本藩のドタバタ劇をみてもらったが、結論はご隠居さんの話に尽きる。
松本市の医療施設は足りている。人口が中心部より早く減る波田に、巨額な病院を作ることはやめた方がいい。慢性赤字続きで「建設起債」も返せない。建設場所の駅前運動広場は提案した市幹部も委員会も現地をよく知らないお粗末であった。危ない上に、狭い場所に無理して建てるのは、波田の住民や市民のためにならない。市民に正しく経緯を知らせないのはもっての外だ。一旦凍結するのが真っ当ではないか。
市立病院職員は市の職員でもある。市民のために働く病院が、経営改革をしないで赤字は税金で補填して当然という体質こそ大問題である。病院の建て替えについては分相応が当然である。立場、能力、立地条件、人口動態を無視し経済と医療政策の激変を知らないか、関心を持たない市職員と市議会議員である。
12月の国会質問で最もつまらない政治家のタイプは、“自分の考えを持たない政治家”という議論があった。また、“権力を握ると行き過ぎた考えが暴走する”ことがある。“市民が無関心”だと、誰一人責任を取らない悲惨な結果になるだろう。
例を挙げよう。救急に力を入れるので、広い外来と27の診察室が必要と主張。7診療科で救急医療は完結出来ない。市立病院に重症は搬送しない。患者は中・軽症である。「働き方改革」で、時間外労働が制限され救急医療が難しくなった。3つの手術室を要求するが、松本医療圏のDPC(診療群分類包括評価)対象病院の実績は最下位で、難しい手術は出来ない。外科医の成り手が少なく10年後には、消化器外科は大病院へ集約されるだろう。市立病院の手術室は2つで充分である。
市立病院の役割は高齢者の在宅療養を支援するのが主な役割だが、急性期医療が主だと間違えている。元病院長時代から訪問看護・介護を軽視している。それが、今回の計画に色濃く反映されている。
管理者と病院事務部長は、金をかけ大きく立派な建物で重装備を目指してきた。しかし、小さい病院が大風呂敷を広げても、全て税金頼りで経営を考えたことがないので大赤字で潰れてしまう。目的達成のために、反対する者を遠ざけ、市長を利用して職員を沈黙させている。 管理者と事務部長はピントハズレなことをしている。市立病院では、2023年3月病院で亡くなった患者の遺体を、別の遺体と取り違えて病理解剖する、あり得ないことが起きている。
市立病院と松本市の対応は「知らしむべからず」(施政に従わせればよく、理由や意図を説明する必要はない)である。地元新聞は、市立病院の発表以外は何も市民に伝えない。これこそ大問題である。
誰でも“長いものには巻かれろ”は良い結果を生まないことを知っている。『市民の会』7年の活動は、一言で言えば、身勝手で無謀な計画は松本市の財政に大打撃を与える。それを止めるのが医療の現場を知る医師の役割である。
建設費の高騰で全国の病院建設が中止や見直しとなった。北野管理者の歪んだ考えは、市立病院の倫理感と組織の統治を壊した。人口減少・高齢化社会を見据えなければ、地域に役立ち、自立した持続可能な病院にはならない。
松本市が市立病院の言いなりになると、総事業費(建設費、設備費、銀行金利、駅周辺整備費)は180億円近くになり、維持費も年8〜10億円かかる。莫大な数字になる建設予算(=ばらまき)を市議会は認めるのか。 パルコどころの話ではない、とんでもないことになる。松本の民主主義の正念場である。市民も声を上げるべきである。
日本列島は地震の活動期を思わせる。なぜ危険な場所に病院を建てるのか?簡易工事をしたから法的に問題ない(市長)、了承したことは変えられない(市議会)。人は自然現象を軽んじることは許されないし、世の中の常識ではない。
今からでも遅くない。病院のあり方が、本質的に問われている。数字は決して嘘をつかない。無謀な計画の是非を正しく判断する者はいるはずである。人は真実と向き合う者と真実から目を背ける者がいる。市役所、市議会、市立病院が事態を冷静に判断することを願ってやまない。
市立病院は患者の退院を延ばしている
DPCは急性期入院医療を対象とした診療報酬の包括評価制度である。病名や治療内容に応じて分類される診断群分類毎に、1日当たりの入院費用を定めた新しい医療費の計算方式である。全国で17,86の病院が参加しているが、100床以上200床未満は466病院である。厚労省は対象病院の診療実績をネット上で公表し、誰でも閲覧が可能である。
DPCは患者7人に看護師1人を配置することで、高点数が取れ病院収入に貢献する。DPCの在院日数は外科系が8日、内科系が11日を過ぎると減額になる仕組みになっている。
若年人口が多い大都会はDPC対象患者が多く、高度医療が可能な大病院では有効に機能する。一方、地方の病院は、高収入になる対象患者が少ないので、DPCを維持するために、高度の技術をもった医師と一般診療の2倍の看護師と高額医療機器等が必要となる。そのための経費は莫大で、中小病院がDPCを維持することが難しくなっている。包括支払方式では、支払額が固定されているため、「不必要な在院日数延伸を行なわない」「不必要な検査を行わない」「不必要な投薬を行わない」というコストカットが「利益を大きくする」ために必要不可欠となる。このため「診療の標準化・効率化」が期待できる一方で、「粗診粗療が生じないか」という懸念が常に付きまとう。
内科、外科、整形外科、泌尿器科の上位5位までの疾患の平均在院数を市立病院(自院)と全国で比較したのが、市立病院DPC表→である。小児科と婦人科は全国平均並みか以下、外科も問題がないので検討から省いた。
表のDPCコードでは、3科の在院日数は全国平均を上回っている。明らかに長い内科、整形外科、泌尿器科の項目に●
をつけた。特に整形外科は長い。
退院を延ばすことで、DPC対象患者の延べ在院日数は、内科1,614日、整形外科2,734日、泌尿器150日、合計4,499日になる。なお、DPCでは在院日数を延ばしても、前述の如く病院収入は余り増加しない。
入院患者増の「からくり」は、入院患者数は、2023年上半期は1,616人で、2024年上半期は1,751人なので、約140人の増加。それと平均在院日数1.5日延長したことで、1日平均入院患者数は31人増となり、6ヶ月(180日)をかけると延べ入院患者数は5,600人増になるではないか。
市立病院は、在院日数を延ばして空床を減らしも、病床稼働率を上げているに過ぎない。しかし、病院の都合で退院を延ばされた患者は大切な時間とお金を余分に取られたことになる。退院延ばし(在院日数延伸)は患者さんの信頼を裏切っている。北野管理者は、病院経営は稼働率だけで無いことを全く分かっていない。これでは、巨額病院を作れば潰すことになる。
専門者会議「提言」(2020年11月)
- 病床数は199床から166床に縮小する
- 経営形態は独立法人化を検討する
- 産科は病床数を20床から10床に減少する
- 感染症病床は6床とし、20床程度の増床にも対応する
- 新病院の特徴の一つとして「フレイルサポートセンター」を新設する
提言は5項目であるが新病院を建てる前提条件として、先ず経営改革に取り組むこと、現病院の詳細な経営分析を行うこと、病院には課題解決のための方針を詳細に伝えている。
2021年11月『市民の会』は専門者会議座長と委員に、市立病院が特別委員会に示した「基本計画」に対する意見を求めた。以下がその回答である。市立病院が特別委員会に示した基本計画は国の方針に反しており、現在の病院の実情とコロナ禍後の医療情勢の激変が反映されていない上に、財政計画が曖昧なので評価すること自体意味がない。国が命じた「経営強化プランを実行して経営を安定させない限り病院は存続出来ない」と述べている。
その後の経緯、「経営強化プラン」は赤字の原因である支出の削減を行わないで、収入を増やす案を実施している。病院建設特別委員会が杜撰な案を追及すると“がんばる”と答えているが、精神論で経営改革は不可能である。2024年11月7日市立病院は、上半期の決算を内部の経営評価委員会で発表した。しかし、肝心の市厚生委員会に報告しないで隠している。
松本市議会条例
第2条 議会は市民の代表として次に掲げる原則に基づいて活動するものとする。
- 政策決定並びに市長他の執行機関の事務について監視及び評価機能を果たすこと
- 提出された議案の審議または審査を行うほか、独自の政策の立案及び提言を行う
- 市民への説明責任を果たすとともに、議会活動への市民参加を推進すること
- 市民の意見を的確に把握し、市政及び議会活動に反映させること
第3条 議員は議会を構成する一員として次に挙げる原則に基づいて活動するものとする。
- 議会が言論の場であること及び合議制機関であることを充分意識し、議員間の自由な討議を重んずること
- 日常的に調査及び研修活動を通じて自らの資質の向上に努め、市民の代表にふさわしい活動を行うこと
- 議会活動について、市民に対して説明責任を果たすこと