管理者は設計業者の選定で不正を犯した
〜不正だらけの業者選定の内幕を糾弾する〜
1. 病院設計業者の選定で何が行なわれたか
市立病院は2021(令和3)年9月、「見直し骨子案」が病院建設特別委員会で了承された。市立病院は前市長時代の計画を踏襲して各部門の調整を図った。2022(令和4)年2月、「病院建設基本計画」が市議会で了承された。同年4月に建設会社(設計会社)に建設基本計画業務委託プロポーザルの募集を行った。同年7月21日、コロナ禍であったが抽選で参加者を決め波田支所でプレゼンテーションを行った。
募集要項の最初に施設整備計画・ゼロカーボン推進と書かれている。計画の条件は敷地面積11.800m2、建物階数は4階予定、延床面積15,000m2、建築面積3,800m2、駐車台数450台となっている。令和4年、松本市病院局広告2号では、建物階数が未記載となっているが、故意であろうか?
不正の背景は、公募条件が4階予定であったにもかかわらず、2次審査に進んだ5社中5階建で申請したのはY社1社のみであり、それを市が最終選定したことにある。事業管理者と市長の思惑通り、5階建を前提にしてこそ機能する病院設計で、駅周辺の環境整備までもが一体化されていたのである。さらに審査委員会は、Y社の取組意欲、理解度、方針と計画、提案テーマを特別高く評価して審査の正当性を高めている。市が自ら決めた公募基準を覆したことは規則違反のスキャンダルである。この問題は市政の根本を揺るがす重大事であり時効はないので徹底的に追求すべきである。
1)建設計画は白紙になった2017年の拡大・充実路線を踏襲している。
狭い敷地(11,800m2)に延べ床面積(15,500m2)、建築面積(3,800m2)と駐車台数(450台)を確保することが困難であり、各室に余裕を持たせ、使い勝手をよくするためには4階建では不足であり、5階建が必要なことを管理者もY社も十分承知していた。
2)何故初めから「5階建」を明記した公募条件にしなかったのか?病院の要望をすべて取り入れてくれる特定の設計業者と事前に相談していたからではないか?公的病院建設は業者を恣意的に指名出来ないように公募で行われる。今回は金額で決める競争入札(最も安価)でなく、プロポーザル方式(最も良い提案)を採用した。病院側にとって好都合な5階建を提案したのはY社のみであり、そこに高点数を与え、低い点数の4社を合法的に締め出すことが出来ると考えたのが不正1。これでは公平性や透明性が担保されない随意契約に等しく、官公庁としては不適当であり規則違反といわれてもしかたがない。この問題に時効はない。公務員である北野管理者は説明責任を果たしていない。
3)「市民の会」は市の4階予定という発注条件に対し5階建を出したY社に決定した理由を北野管理者と嵯峨副市長に文書で回答するよう求めた。公募で4階予定と記載してあるので、市が5階建で発注しない限り応募業者は4階建の図面を作成して提出するのが業界の常識である。事実、4社はその通りにしている。一方、管理者と病院局は狭い敷地であることから5階建が使いやすいことを十分理解していた。では何故4階予定で応募したのか。管理者は「階数」を事前に確認しなかった4社側に責任(落ち度)がある。「取り組み意欲」、「業務の理解度」、「業務の実施方針及び計画」でY社が優れていた。設計だけを審査したのではなく、いかなる技術提案ができるかを主として審査するものです。技術提案書の5階建て提案「のみ」を持って選定したわけでないと答えた(資料1)。全くでたらめな回答に設計業者、税理士もあきれている。Y社に決めるため審査で4階建の4社を合法的に落とす目論見であれば悪質で、松本市は4社から競争の機会を不当に奪ったことになる。これが不正2。
4)審査員に外部者を多くし正当に審査することが通例であるにも拘らず、プロポーザルを審査した5人のうち4人が身内(管理者・病院長・事務長・副市長)であったことが不正3。事前にY社と相談していれば審査結果が高点数になるのは当たり前である。
5)プロポーザル審査は全て公表義務があるため、市は審査の経緯と結果を市のホームページで明らかにしている。選定されたY社は業務への理解として最初から「医療を核にした街づくりの拠点」を揚げている。これはまさに臥雲市長の主張そのものであり、当初から市長が関与していたと考えるのが自然であるが不正4。
6)市立病院は国から「地域密着型病院(地域の中で軽度の急性期から回復期、在宅医療等を担う小病院)」とみなされている。しかし、Y社は応募で市立病院は、急性期医療を中心に、そして公立病院の使命である救急・感染医療や周産期医療、へき地医療等の政策医療を担うとはっきり記載している。
7)審査項目に病院建設にあたり、取り組み意欲、業務理解度、業務の実施方針及び計画が高評価されているが、主たる評価項目ではない。
8)公表されたプロポーザルの審査結果(資料2)では、応募業社名は1位、2位だけで他は伏せられている。提案テーマ1.2.3.4が具体的に記載されていない理由は内容を知られたくないと考えたに他ならないことが不正5。
9)提案テーマ1は基本計画の整備方針に則した設計コンセプトの提案
基本計画は狭い敷地に199床を想定した時代の計画、例えば27の外来診察室、広い検査室、4室の手術室に代表される、を踏襲している。また、管理上病室は各階50床が限度であるなど、狭いゆえ5階にしなければ使い勝手の良い病院にならないことは、初めから分かっていたはずである。4社の4階の基本設計は、狭い敷地いっぱい建物が占め、必要な450台の駐車スペースが取れないため、隣の立体駐車場と空中回廊で繋ぐなど提案している。当選したY社も河岸段丘から建物を20m離したスペースを駐車場にしている。1及び2階部分は各部屋が狭く余裕がない。3及び4階部分は80床と100床の病室に代表されるが、中央に1箇所のナースステーションでは病室への動線が長く使い勝手が悪い。
10)提案テーマ2は病院建設としての安全性についての提案
Y社を初め5社が、波田地区は河岸段丘がある特殊な場所であるにも拘らず運動広場の地勢調査を一切していないことは不自然で信じられない。市長も管理者も地震災害に無頓着なことが原因である。1社だけ糸魚川〜静岡構造線帯地震の発生率に触れているが、波田地区の地勢を知らないためか建物の耐震構造だけで十分と考えている。
11)提案テーマ3はコスト低減及びコストに関する低減
建設の専門家でない3人の医師と2人の職員だけで判定することは不可能で、病院建設のプロを選定委員に加えなかったのは誤りである。
12)提案テーマ4は地域を支える役割を果たせる病院づくりの提案
そもそも地域医療を支える病院の役割は、まず自分の病院の役割(一般・高齢者医療)を実践し、松本地域の他の病院、診療所、福祉施設と連携し、フレイル予防など地域住民の健康啓発を務めることである。市長の言う医療(病院)を街づくり核にする役割については一切書かれていないので3社はこの点に触れていない。1社は現在の病院の駐車場と西病棟を残し中央に円形の多目的広場を作り、西病棟を老健施設、独居老人・移住者ハウスにリニュアルする、と院内に限った拠点づくりについては記載している。しかし、Y社は複合施設「メディカルパークHATA」を駅に隣接して建て、多世代の人々が集い交流できる新たな賑わいの拠点をつくり「健康・福祉」と「3ガク都」と繋がるとしている。これは臥雲市長の考えそのものである。事前に市長がY社と深く関わったと思われても仕方がない。さらに市長は現在の病院も危険区域にあることを理解していない。
13)設計業社の選定は出来レースの官製談合といえる。管理者と市長は建設業界に多大な不信感を与えた。管理者と市長の思惑通りの計画を進めるための不正行為は、市のコンプライアンス違反(応募規定を恣意的に解釈・変更)であることが不正6。
14)市議会は市民を欺く不正行為の経緯と結果を過去の話にするのでなくメスを入れるべきである。
15)最後に市長が推奨する病院のゼロカーボン化を実現する設備投資は、木材チップを使用する発電所は塩尻市で頓挫している。井戸水使用の冷房も困難である。耐久性、対費用効果を考えやめるべきである。
2. まとめ
市立病院管理者は、基本設計業社の選定に際し、してならない不正を犯した。
管理者の言うことを何でも聞く意中の業者を選定するため、選定に際し公募条件を変えてしまった。
権力を持てば、何でも意のままになると考えるのは浅はかである。
「市民の会」に対する回答に対して資料1は、病院建設課長(土木技師)のもとで作成された。これを検討した他の設計業者と税理士は、素人の書いた文章で不正を正当化する言い訳になっていないと述べた。また、資料2の審査について、5人内3人は医師、2人は副市長と病院事務長で建築の基礎知識はなく、病院建設に直接、関わったことが皆無であることから、専門家は一人もいない。審査は業者提案追認であり、管理者が仕組んだ茶番劇だと述べた。「市民の会」も同意見である。
管理者は、松本市の建設政策に大きな傷つけた。公募に沿って図面を書いた4つの会社の担当者はじめ設計会社の努力を無にしてしまった。仕事を受ける立場の業者は将来を考え沈黙しているが、建設業界の信頼を完全に失しなってしまった。市職員である管理者が犯した不正は、松本市の職員業務規定に反し悪質である。不正に時効はないので、管理者は責任を取るべきである。
3. その後の経緯
1)地震を考慮しないで、河岸段丘の窪地に病院を建てることを止めない。市長の最大の役割は市民の生命・財産を守ることに尽きる。どこの市長もこれを大事にしている。臥雲市長はなぜわからないのか?
2)病院建設で駐車場は欠かせない。当初、隣接した市営駐車場と2階建の通路で結ぶプランは中止した。簡易工事をしても危険地帯であるので、病院全体を運動広場の土手から20m北側にずらし、空き地に200台の駐車場を確保した。それでも不足する250台を波田駅の再開発で確保するつもりである。
3)波田地区市議会議員の提案であった、北側の河岸段丘にトンネルを掘る学童通学路は新聞も取り上げた。危険で20億円かかることで中止した。
4)波田地区住民が野球、サッカー等で使用している運動広場を移転する必要がある。移転先は福祉ゾーンである健康福祉センター近くであるという。病院移転先の最適地であることを考えると本末転倒もいいところである。当然、数億円の余分な経費がかかる。
5)県道25号線と運動広場(建設地)は段差があり、建設予定地への進入路拡幅に既存建物がある。地権者の承諾と移転が必要で、買収費が生じる。県道自体も急な坂道で難工事になる。