市立病院建設は一旦凍結し、一から見直すしかない
「リスクヘッジ(Risk hedge)」とは将来発生する可能性があるリスクを予測し、その影響を最小限に抑えるための戦略や対策のことである。予測不可能な事態や市場(社会)の変動によって発生する損失に対して備えるために用いられる。新市立病院建設にあたって、最も重要なリスクヘッジについて考えてみよう。
- 地下鉄サリン事件から30年、1995年度末国債発行残高は225兆円、去年までの残高は1105兆円。国は「健康保険制度」を維持するため、47兆円余の国民医療費を7兆円減らすことを掲げ、病院と医師の削減を「撤退戦略」にした。病院が生き残るためには、病院の規模を縮小する以外に道はない。
- 厚労省が診療報酬と介護報酬を下げた結果、全国の病院は大小を問わず経営難となり破綻する病院が報告され、診療所も閉院や廃院を余儀なくされている。老人介護施設やデイケアセンターも閉鎖に追い込まれ、今後大量の介護難民が出ることが予想される。
- 急性期の患者を主としてきた医学教育、過剰な検査や投薬をしなければ成り立たない病院経営、安い支払いで高い医療レベルを求めてきた国民、医療・福祉を正面から取り組んでこなかった政府、医療問題の核心に沈黙してきたマスコミ、など誰もが「部屋の中の象(見て見ないふり)」を決め込んできた。理不尽な戦争は止まず経済成長は停滞し、世界はスーパーインフレに向かうであろう。
日本は若年人口が減少し続け高齢人口が増加し、いずれは総人口が減少するので、世界に冠たる「国民健康保険制度」は破綻寸前である。国、医療関係者、国民は今日の事態を収拾することを先送りしてきた。しかし、医療や福祉は国民のセフティーネットであることを忘れてはならず、持続可能な対応が急務である。 - 地域医療を守るには、各病院の機能を特化させ連携するしかない。
- 病院が少子・高齢化と人口減少に対処するには、高齢医療や在宅医療を推進することが鍵になる。
- 新市立病院建設に要する費用は、建物150億円(1m2当たり100万円で延床面積が15,000m2)、銀行金利45億円を加えて195億円になる、医療機器、医療用コンピューター、什器、移設費他、波田駅周辺整備でさらに30億円近くかかるだろう(推定)。
- 松本市は200億円を超える資金を調達できるのか? 建設を強行すれば市の財政に大穴をあけ他の事業が出来なくなる。
- 松本市は県内で一番医療施設が充実している。人口が減少し高齢化が進行する波田地域に敢えて「巨額な病院」を建てる理由は何処にもない。
- 病院の経営予想はでたらめで永久に黒字にならない。2023年度から10年間を見ても、病院経営に61.5億円の税金を投入しても41.5億円の損益が予想され、合計103億円もの税金が赤字の穴埋めに使われることになる(市病院局資料)。
- 市立病院の建設敷地を駅前中央運動広場にしているが、やめるべきである。
理由は①地震対策をしていないので南側の河岸段丘が崩落して大きな被害がでる、②敷地が狭い、③農業用水路の保全ができない、④運動広場の移転と道路の付け替えで数億円余分に費用がかかる、⑤建設に時間がかかる、⑥多くの波田住民と病院職員が望んでいない場所である。日本はいつどこで地震が起こってもおかしくない地震列島である。全国の都道府県知事と市長他が考えることはまず地震対策である。リスクヘッジからすれば、より安全な場所を選ぶのが常識であり、駅前が街おこしに利用するため最適という市長の考えは、誰が考えても常軌を逸している。病院建設場所は「西部保健福祉センター」に隣接する場所に変更することが妥当である。 - 松本市は今まで病院を建てた経験がなく、市立病院の考えをただ追従している。市議会議員は医療や病院建設や病院経営の素人であって計画を判断する基本的な知識に乏しい。今は医療環境が激変して病院が潰れる時代である。他のほとんどの病院は病院建設の中止や見直しを断行している。
- 菅谷前市長も、臥雲市長も「市立病院のあり方」を考えることなく、医療の専門家による「提言」も無視している。「市立病院」は、市民の病院だから、「巨額なお金をかけた病院」を建設して急性期から慢性期医療まで幅広く対応できるようにと考えたことが最大の間違いである。そんなことは特徴がない180床の病院には出来ない。
- 市立病院建設は「市長案件」だからと、市の部・局長は誰一人口を挟まないのは職務放棄である。財政部は、市立病院と同規模である全国の180床規模の病院の経営と病院建設を調べる責任がある。建設部は、専門家に波田地区の地形や地震について、波田せぎ(農業用水路)や現在の病院を建てた経緯について波田の古老や支所職員の話を聞くべきである。健康福祉部は、病院経営や老人問題について調べる責任がある。何もしないで市立病院の提出した資料を鵜呑みにするなら各部局は何のために存在するのか。なぜ、市職員は病院局が出す間違った数字や、設計業者選定の不正を黙認しているのか?
- 市立病院は職員の恵まれた立場を守り、総務省に出す決算書を改竄し赤字を黒字にした。設計業者の選定では応募条件を変更する不正を働き建設業界の不信を買った。コロナ禍で大赤字の時期に3年間連続黒字にしたと発表。また、患者の退院を延ばし半年で入院患者が延べ5,647人増えたと新聞発表する等、管理者は自分の立場を守るために平気で嘘をついてきた。厳しい医療情勢の中で市立病院が経営危機を乗り切ることは、まず不可能である。
- 市立病院は赤字がでれば、市が補填するのが当然であり、また他の病院より高額な給与を得るのも当たり前とばかりに、経営努力や住民のための医療は何かを真剣に考えていない。
- 「市立病院建設特別委員会」という巧妙な仕組みによって、病院経営や建設について専門家である医療関係者を排除している。市立病建設の可否は議員の多数決で決まるが、「病院の思い通りの計画でよし」とばかりに忖度する議員が多いことが気がかりである。こんないい加減な仕組みは他の市にはない。素人同然の職員と判断基準を持たない市議会議員は病院側に言いくるめられ、正しい判断ができるだろうか?
- 市議会議員に物申す。「市立病院の『頑張ればなんとかなる発言』」と「市民の会の『禍根を残さないための緊急提言』」のどちらかを信じるかと言っているのではない。物事は、嘘をつかない数字で判断するしかない。
行政の間違いを監視するのが、市民から選らばれた市議会議員の本来の役割である。市立病院の不正行為やでたらめな計画に対し「見ざる・言わざる・聞かざる」をしている議員は責任を果たしていない。市民は各議員の発言と行動に注目し、選挙で正しい一票を投じたいものである。 - 建設予定の建物は大地震が起こっても安全というが、南側の河岸段丘が崩壊すれば甚大な被害が出る。なぜなら農業用水路には163トン/分の水が流れている。国の方針に反して、200億円以上をかける病院は大赤字で潰れる。リスクヘッジの観点から松本市は計画を凍結して、一から見直すしか道はない。
- 地元新聞が市長に忖度して、市に都合の悪いことを一切記事にしないのは、マスコミの果たす役割を放棄している。
- 西部地区以外の市民が市立病院を利用しないからといって他人事のように沈黙していれば、ツケは全市民が背負うことになる。
- 「市民の会」は7年間、33回の「緊急提言」を行なってきた。市立病院の誤った発言、病院建設特別委員会や新聞発表に、関連資料をつけて反論と忠告を続けている。病院側は耳を傾けず、「緊急提言」に反論しないで無視している。
- 医療者が意見を述べる機会は、全て決まった後のパブリックコメントしかないが、病院側は意見の違いとして全て却下している。本来、松本地域全体で考える医療問題が、病院の独りよがりな計画になってしまう原因がここにもある。無謀な計画を進めれば、市立病院は自殺することになってしまう。
- 今、すべきことは傲慢な市立病院の体質を見抜き、でたらめな計画を信じることなく、これからの時代に合った在宅療養支援を柱に据えた「身の丈に合った病院」の実現に向けて再スタートすることではないか。
- 市立病院建設は、病院の独りよがりな考えや政治家の思惑やちっぽけなプライドに左右されることではない。「市民の会」は7年間の活動を通じて、“医療は誰のためにあるか”を改めて教えられた。大切なのは将来に渡って世の中、つまり市民の役に立つ病院を建てることである。
- 地震はいつでも起こりうる。経済は困窮している。市長に課せられた最大の責任は“市民の生命と財産を守る”ことである。
- 市民のために市職員、市議会議員、医療関係者が一致協力し英知を結集して正しい道を選択することを願って止まない。