新市立病院のあり方を考える市民の会

市立病院の主な病床機能は急性期機能でなく包括期機能に該当する

地域医療を担う病院の病床機能が変わった

厚労省による「新しい病床機能」の内容

高度急性期機能・急性期の患者に対し、状態の早期安定化にて診療密度が特に高い医療を提供する機能
急性期機能・急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて、医療を提供する機能
包括期機能・高齢者等の急性期患者について、治療と入院早期からのリハビリ等を行い、早期の在宅復帰を目的とした治し支える医療を提供する機能
・急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療やリハビリ等を提供する機能
・特に、急性期を経過した脳血管疾患や大腿骨頸部骨折等の患者に対し、ADLの向上や在宅復帰を目的としたリハビリを集中的に提供する機能(回復期リハビリ機能)
慢性期機能・長期にわたり療養が必要な患者を入院させる機能
・長期にわたり療養が必要な重度の障害者(重度の意識障害者を含む)、筋ジストロフィー患者または難病患者等を入院させる機能

急性期患者に対応するため、日本中の病院が医師・看護師・事務員他を増やし高額医療機器を備え、病床を増やし病院を大きくしてきた。それが日本人の寿命を延ばした一因であったが、若年人口の減少と高齢人口の増加が進む今、医療費の膨張で医療保険制度が維持出来なくなっている。自由診療でない医療(保険診療)は人件費・材料費・薬剤・高額機器の維持費・高熱水費・食糧費・外注費の高騰で、何をやっても支出が収入を上回り、病院経営は大赤字になっている。

2024年6月厚労省が医療費を抑制した結果、病院が淘汰される時代に突入した。財務省は2年間限定で赤字対策費(数億円)を拠出するというが、問題の先送りでしかなく病院の倒産・淘汰がさらに加速することは間違いない。国は医療・福祉費の圧縮で2040年問題を乗り切ろうと考えているが、それでは国民のセフティーネットを根底から壊す危険があり納得できない。

地域医療を担う病院の病床機能は、「広域急性期型」と「地域密着(多機能)型」の二つであった。ところが、市立病院は「(多機能)」を何でもできる総合病院と勝手に解釈した。波田病院は西山地域唯一の病院だから総合病院として残そうと考え、信州大学病院から多数のパート医師を受け入れ波田総合病院を名乗っていたが、実際は高度医療や専門医療を担えない慢性赤字病院であった。波田町最大の懸案事項であった病院は合併により松本市に移管したが、病院の機構・経営改革は放置され、さらに松本市が甘やかした結果、自立できない大赤字の病院にしてしまった。

ここに来て厚労省は地域医療を担う病院の病床機能をさらに細分化し、2024年12月3日に新たな病床機能を発表した。それは表の如く「高度急性期・急性期・包括期・慢性期」の四つである。市立病院の役割は「包括期機能」に該当する。

しかし、現在の病院建設計画では救急医療に対応するため27もの診察室がある広すぎる外来スペースや手術実績が少なく70歳代の麻酔医が1人しかいないにもかかわらず3つの手術室を有する急性期機能指向になっている。また、要であるはずの感染症対策も一般患者と分離されていないなど不備がある。

波田病院の歴史、人口動態、常態化している赤字、波田特有の地形、国の医療政策の大転換など、10年先を何一つ考慮せずに、ミニ総合病院として急性期機能を主体とした「巨額な病院」を建てようとしている。結局のところ180床の小病院に過ぎない。常勤医師がいる診療科は内科・小児科・産婦人科・外科・整形外科・泌尿器科・脳外科・麻酔科の僅か8科に過ぎず、働き方改革で医師の派遣が益々困難になり、救急医療への対応も難しくなる。高度医療や専門医療は不可能である。43億円強の収入に対し人件費が70%を超えるので慢性赤字は解消されていない。今は都会の大病院でも潰れる時代である。建設費が2倍近く高騰し、多くの病院建設は中止か見直しを余儀なくされている。

市立病院建設は、基本設計を部分的に変更すれば解決するという程度ではない。嘘だらけの数字と規則破りまでして進めようとしている180億円を超える「巨額な病院建設」は初めから無謀な計画であったと目を覚ますべきである。
市立病院の果たす役割は包括期機能であることを再認識すべきである。

西山地域住民の在宅療養を推進する「治し支える医療」を行うことこそが現在そして将来に渡って求められている。そのためには巨額な病院を建てることでなく、高齢化が進む地域への往診・訪問介護・訪問リハビリの充実や高齢者等の急性期患者について、治療と入院早期からのリハビリ等を行い、早期の在宅復帰を目的とした「治し支える医療」を提供する機能が根幹になる。「フレイル予防センター」を充実させて、波田地域の介護予備軍を減らすことが市立病院の重要な役割ではないか。誤解がないように述べるが、一般患者や急性期患者を診てはいけないと言っているのではない。

臥雲市長に問う。市長は前回市長選当選後、菅谷前市長の失敗を繰り返さないため、2020年、新たに松本市立病院建設に係わる専門者会議を招集した。同会議は市立病院の詳細な分析、国の医療方針、人口動態と地域医療の将来を見据えた適切な「提言」を提出し、市長はこれを了承した。それにもかかわらず、病院管理者はこれに猛反対した。病院を縮小すれば職員が離職して病院が潰れると主張。市長は管理者を更迭しないで「見直し骨子案」の策定を命じた。管理者は機構改革や経営改革をしないで、コンパクトな多機能病院(前者と後者は矛盾)」を目指すと宣言した。基本設計は多機能(色々な医療)を担う「巨額な病院」であってコンパクトでない。大赤字の垂れ流しで前回と同じ失敗を繰り返すことになった。管理者は、現在から将来に渡り病院経営が健全なことを証明するため、嘘をつくことを余儀なくされている。コロナ禍の大赤字であったが、補助金のおかげで帳簿上黒字になったので、3年連続黒字と宣伝した。過去にも松本市は、市立病院が総務省に出す決算書を粉飾したが、黙認した悪い実績がある。また、入院患者が増加して病床稼働率が90%を超えたと宣伝しているが、これは患者の退院日数を伸ばして数字を操作したことによる嘘である。管理者は地域医療の本質が分からず「専門者会議」の提言を骨抜きにした。180床の小病院にも拘らず、波田に何でも出来る病院が必要と思い込み、自分は嘘や違法が許されると勘違いしている。どこかのマラソン大会の如く、誤った目的達成のための粉飾は、市立病院では日常茶飯事なのであろうか。

市立病院は、市民に病院を知ってもらうため、①イメージキャラクターを募集する、②入院している高齢者のため、病院近くに畑を作って草むしりをしてもらう案が職員から出され、病院全体で決めると新聞報道した。病院幹部のノー天気に呆れ返る。幾ら赤字を出しても市が補填するから心配ないと考えているのであろう。今日、自浄作用が働かない病院は生き残れない。経営改革をしないで、自分達のための「巨額な病院」を建てれば、松本市の財政に大穴が空くだろう。

新病院の経営予想は10年間で102億円もの大赤字である。なぜ、総合戦略局や財政部は沈黙しているのか? 単年度2億円の赤字で小病院が潰れている。これ程杜撰な計画は日本中探してもないだろう。このまま計画が進めば、松本市はいずれ潰れる病院を建てることになるが、その時現市長は責任を追求される立場にいないであろう。心底無責任な話である。市民は沈黙してないで怒らなければいけない。

市立病院は目指す方向を間違えている。最早、市長、市職員、国が示す“包括機能”を基軸に据え、病院建設計画を一からやり直す覚悟をしなくてはならない。

市議会議員が市立病院の無謀な計画に無条件で賛成することは、大病院も経営難で潰れる時代、市の財政、市立病院の本来の役割を無視していることに他ならない。医療の現実と民意と著しく乖離した自己主張は醜く歪んだものになる。

将来に禍根を残さないために、論語の「過ちては改むるに憚ること勿れ」を胸に刻んで欲しい。

4月19日午後8時19分頃に発生した県北部を震源としたM5.0の地震は、改めて「糸魚川〜静岡構造線帯地震」の存在を知らしめた。寺田寅彦が残した警句、「天災は忘れた頃にやってくる」「天災はいつ、どこにでもやってくる」になった。駅前の中運動広場は南北に河岸段丘がある窪地で、さらに南河岸段丘中段には「農業用水路」があるので、やめるべきである。なぜ、病院職員と住民が希望する安全で広い「西部保健福祉センター」周辺にしないのか?

市は波田地区町会長の意見を聞いたからよしとしているが、それでは全く不十分である。なぜなら、市全体の問題なので、医療の専門家や財政の専門家や地震の専門家や広く松本市民の声を聞くべきである。安易に決める問題ではないからである。

コラム松本市はお金があるの?

先日、東京に引っ越した旧知の友人から電話がかかってきた。

テレビニュースで見たけど松本マラソンの運営で不正が発覚して今年の大会を中止すると言っていたが、一体何があったの?

評判が悪いコースで参加者が予定の半分以下で大赤字を出したが、担当部長が中止を恐れて、赤字を黒字に粉飾したようよ。何でそんなことをしたの?

担当部は中止の意向を示せば市長から怒られると思ったのでしょう。市長は粉飾を知りながら1億円もの次年度予算を計上して、その予算が市議会で承認を受けてしまったことが問題になり、第三者委員会で検証されると報道されたわ。市長の独裁を恐れて職員が黙っているので、市長はやりたい放題という人もいるわ。兵庫県知事のようになれば市政は停滞するから、市民もしっかりしなくちゃーいけないわ。ところで、松本市は外堀を掘ったり、大きな博物館を建てたり、波田にお金がかかる病院を建てると聞いたが、どこにそんなお金があるの?ないと思うわ!市役所の建設や重要な案件が全て先送りになるでしょう。国から地方交付税が来るからは疑問だわ。国も市もお金がないのに大きな借金をして、病院を建てて潰せば、若い人たちに負の遺産を残すことになるわ。今、東京でも病院が潰れたり、診療所が閉鎖したり、老健施設の運営ができないが起こっているわ。なんでも医療界は、世間と比べ給与が上がらず人手不足の上、物価高騰で大変だそうよ。病院がダメになれば、住みにくい世の中になるわね。松本市は大病院や診療所が多いので、波田の病院には行かないわ。市はお金がかかる立派な病院を建てると宣伝しているが、市民は無関心。全国で病院は建設計画を中止しているようよ。市民が関心を持たなくちゃダメだわね。私もそう思う、理不尽なトランプ関税やウクライナやガザ地区の戦争のニュースが悲惨なのに、誰も何もしないのは不条理だわね。

日本の若者は子供を産めない生活を強いられている。将来、大変なことになるわね。お互いに歳を取っても元気で、ボケないよう頑張りましょう。高齢者が物を言うことも大切だわ。それではまたね。( いけだ・やよい )