〜市政を監視するのは市議会の役割〜
1.はじめに
新聞報道によると松本市の議会改革度は全国3位だそうだ。その理由は、以下の2で示す優れた議会基本条例の制定と高校生との交流が上げられる。しかし、議員が同条例の第2条、第3条をきちんと理解し、遵守しているかははなはだ疑問である。さらに一部の議員は議員バッジをつけているにもかかわらず、同条例を無視し特権階級の如く振る舞う姿は異様ですらある。ある一部の議員によって尋常でない発言が繰り返されている事実を市民に知っていただくことが大切である。
2.松本市議会が制定した議会基本条例とは
第2条 議会は市民の代表として、次に掲げる原則に基づいて活動するものとする。
- 政策決定並びに市長他の執行機関の事務について監視及び評価機能を果たすこと
- 提出された議案の審議又は審査を行うほか、独自の政策の立案及び提言を行う
- 市民への説明責任を果たすとともに、議会活動への市民参加を推進すること
- 市民の意見を的確に把握し、市政及び議会活動に反映させること
第3条 議員は議会を構成する一員として次に掲げる原則に基づいて活動するものとする
- 議会が言論の場であること及び合議制機関であることを十分意識し、議員間の自由な討議を重んずること
- 日常的に調査及び研修活動を通じて自らに資質の向上に努め、市民の代表にふさわしい活動を行うこと
- 議会活動について、市民に対して説明責任を果たすこと
3.一部の議員の発言と行動は目に余るものがある
- 特別委員会で、古手の議員が新人議員の発言を遮り「その必要はない」、「決まったことを蒸し返すな」と暴言を吐いている。第3条の1)が守られていない。
- 村上幸雄前特別委員長は、県議会議員選挙への鞍替えや市議会議員の引退で、特別委員の定数15人が9人になっていた時期に、市立病院が提案した「基本設計」を5対3で了承する暴挙を行なった。強行採決をしたのは市が採択を急がせたからとしたが、これは許し難い。第3条の3)に従い、村上議員は市民に対して説明責任を果たす義務がある。実はこの了承が「巨額病院」と駅周辺整備を許す運命の分かれ道になった。不正までして決めた意中の設計業者の提案は、医療を核にした街づくりの拠点(市長の考え)であり西部地区の基幹病院として急性期医療を中心に公立病院の使命を果たすとしている。しかし、7診療科180床で急性期医療中心は不可能である。広い外来や3つも手術室はいらない。
- 「市民の会」は特別委員会の場での議員との懇談の場を議長に要求した。村上委員長は、日程と場所を決める相談に出向いたが、一部議員による「市民が反対すれば委員会は逐一対応するのか」という意見を聞き入れ、懇談会を開催するという約束を破った。そこで有志議員が市役所外で勉強会を行い、そこへ「市民の会」が参加したが村上委員長自身は参加しなかった。第2条3)、第3条の2)を平気で破ったことは許せない。
- 医療情勢が激変し病院が潰れる時代になったとの報道があった。2025年6月6日、新たに就任した上條美智子特別委員長は、委員会として病院の窮状を聞き取る提案をした。しかし、村上委員は「その必要がない」と強弁し、村上意見へ賛同する委員が多かったため委員会としては聞き取りを行わないことになった。これは第2条の3)、4)に反している。
- 村上氏は松本市消防局長から市議会議員になった人物で、菅谷市政では「北アルプスの遭難者を市立病院に収容するヘリポートが必要」など常識では考えられない発言をしてきた(実際には同病院では重症者の対応は出来ないにもかかわらず)。これは第3条2)に反している。市議会議長を務めたが、社会常識に欠け、病院建設計画の欠陥を見抜けず、自ら議会基本条例破りをするのは、お粗末そのものである。そもそも彼を議長に選んだ議会にも問題があろう。
4.松本市が間違いを犯せば、取り返しがつかなくなる
国(財務省・厚労省)は増えすぎた病院と診療所を半分にするという間違った医療政策に舵を切ってしまった。医療・福祉を蔑ろにする国はいずれ滅びる。イギリスではサッチャー政権が犯した医療・福祉の縮小という過ちを是正しようとしているが回復できずにいる。医療の無駄を省くことには反対しないが、いき過ぎた政策は必ず失敗する。その結果、国民は近くの病院と診療所が無くなることを受け入れざるを得なくなる。一方、私達の地元松本では医療の専門家の意見に耳を傾けず、市立病院の言いなりな建設計画が進行している。この杜撰な建設計画は間違いなく破綻する。医療施設が充実した松本市や松本広域地域において「身の丈に合った病院」でなく経営が出来ない「巨額病院」は無駄であり、そもそも不要である。大赤字を垂れ流して破綻すれば、他の大切な新規事業は大幅延期か達成不可能に陥る。市民生活に甚大な被害が及ぶ可能性が高い。
5.終わりに
2025年6月25日、特別委員会で市立病院問題が議論される。国の医療政策の転換により病院が潰れていく昨今、「市長案件」だからといって忖度する市議会議員は究極の無責任である。「税金だから自分の懐は傷まない」、「失敗しても市長の責任で自分は関係ない」、さらに何も考えない、何も勉強しない議員は「市民のために巨額な病院を建てて、どこが悪い」と思っているのか? 聞く耳を持たない議員に告ぐ!全国で約8割が赤字病院となり診療所の閉院も増えている。支出である光熱水費・材料費・薬剤費・医療機器リース費・委託費・食物費・人件費が高騰し、一方収入はコロナ禍後の患者減少に加え、救急医療・手術・高度医療をやればやるほど赤字が増える。さらに、働き方改革も経営悪化に拍車をかけている。今や、医療全体が構造的な不況になっている。議員は診療報酬の減額で日本の医療・福祉が崩壊に向かっていることを、なぜ理解出来ないのか?
今でも議員は、病院は儲かり開業医は裕福と信じているのだろうか。2024年度の病院決算は殆どが赤字である。診療所の経営も苦しく、全国で後継者がいない診療所は45%もある。新規開業は困難で、地域から開業医が消えていくのが現実となる。木曽地域は7医院しか残っていないし、松本市も閉院・廃院が始まっている。現在の医療情勢では、さらに人口が減少していく波田地区に「巨額病院」を建てても、健全な経営や診療はできずに、大赤字で潰れることは市民の誰が考えても分かる。
市立病院は隠蔽・偽計・背信をしており、「職員の頑張り」だけで経営危機を乗り切れるはずがない。現在の建設計画はあまりにも杜撰であり、医療関係者や市民の感覚と著しくずれている。また、建物(箱物)よりもさらに大切なのは正しい診断と治療、そして患者に寄り添う病院のあり方である。それがストーンと抜け落ちている。立派な病院を建てても根っこが腐っていれば大輪の花は咲かない。土壌から変えていくしかない。
建設費の高騰(資材費・人件費)と金利上昇で、長野赤十字病院と昭和伊南総合病院の建て替えは目処がつかず中止。全国の老朽化した病院も同じである。
臥雲市長に問う、“市長は公約にない潰れる病院建設”にこだわる理由を市民にきちんと説明する責任を果たしていない。
「だめなことはだめ」と言えない議員は市民の代表とはいえない。市民は議員の資質を見抜いて、選挙で一票を投じることである。市議会議員は、市民のための市政を行い、行政を監視するのが役割であること忘れてはならない。
議員一人一人にとって大事なことは、自分の頭で考え社会の常識を大切にすることである。是非、松本市の将来を担っているという役割を自覚し「だめなことはだめ」というべき姿勢を思い出し、それを貫いて欲しい。
松本市立病院建設に関する「市民の会」の緊急提言
- 新市立病院へ期待を込めて 計画の見直しを!:2017/11
- 同、「身の丈に合った病院の建設と開設がかせない:2018/2
- 市立病院の経営分析と改革:2918/9
- 「新市立病院建設」問題の教訓:2018/12
- 市立病院は改革なしで存続できない:2019/5
- 時代の変化と未来に挑戦する市立病院を目指せ:2019/8
- 杜撰な新市立病院建計画の見直しを求めた経過:2020/2
- 松本市立病院問題の真相とその教訓を次世代のために:2020/2
- 松本市立病院問題の経緯を総検証:2021/7
- コロナ時代の病院経営:2021/2
- 臥雲市長が建設を急がせれば財政に悪い影響を与えかねない:2022/10
- 松本市立病院建設基本計画は凍結すべきである:2022/11
- 市立病院計画に賛成できない14の理由:2023/1
- 市立病院が示した「病院基本設計」の実現は不可能である:2023/2
- イソップの寓話が教えること:2023/2
- 市は再び巨額な病院を建てようとしている:2023/4
- なぜ市立病院建設は迷走するのか:2023/8
- 全面的に見直さなければ市立病院は建たない:2023/10
- 運動広場は市立病院を建てる場所ではない:2023/10
- 病院建設計画は白紙撤回して仕切り直すしかない:2023/11
- 市立病院は設計業者の選定で不正を犯した:2023/12
- 管理者の経営を無視した巨額な計画は病院を潰すだろう:2024/1
- 市立病院が作ったのは『経営改革プラン』でない:2024/1
- 市立病院建設は検討方法を改めるべきか:2024/2
- 市立病院建設は夢物語:2024/3
- 建設費は180億円以上かかり松本市の財政にヒビが入ります:2024/4
- 経営改革しない市立病院は破綻する危険がある:2024/5
- 市議会は市政を監視するのが役割のはずだが:2024/8
- 市立病院建設は誤魔化しの産物ではないですか?:2024/9
- 医療は「2024年問題」を乗り切れるか:2024/10
- 管理者は「巨額病院」市長はなぜ途中から考えを変えたのか?:2024/12
- 市立病院建設が遅れている理由はなんですか?:2025/1
- 国が定めた「地域医療構想」と違う病院を建てようとしている:2025/2
- いま日本の医療が危機的な状況にあるのは本当ですか?:2025/3
- 病院が潰れる時代と聞きます。病院建設のリスクは何ですか?:2025/4
- 地域医療を担う病院の病床機能は変わったのですか?:2025/5
- 市立病院の役割「コンパクトな多機能病院」は正しいですか?:2025/6
- 市議会は誰のためにあるのですか? 議会基本条例とは?:2025/7