新市立病院のあり方を考える市民の会

国の医療政策転換と市立病院の行方

〜包括期機能への転換こそ生き残りの道〜

1.はじめに

厚生労働省はいま「新たな地域医療構想」を進め、全国の病院機能を再編しようとしている。従来の「急性期・回復期・慢性期」の区分を見直し、新たに「包括期」という概念を導入する方針である。包括期機能とは、高齢者や中等症の急性期患者を受け入れ、入院初期から治療・リハビリ・栄養・口腔管理を一体的に行い、早期在宅復帰を目指す「治し支える医療」を担う病院機能である。国は「治す医療」である急性期医療を拠点病院に集約し、中小病院には包括期・在宅支援への転換を求めており、これは医療政策の大きな転換点である。この流れを無視すれば、地域病院は確実に取り残される。
松本市立病院は199床(新病院では180床)の小病院であり、2023年度の松本広域圏調査でも「高度医療・高度救急・専門医療」を担うことは困難とされた。
手術件数を倍増させることも非現実的で、実態としては高齢者中心の包括期的医療を行っている。従って、「市立だから」、「老朽化だから」という理由で巨額の新病院を建てても、運営体制も診療実績も伴わない。
これはまさに「豪華な劇場を建てても、演目と役者が揃わなければ観客は来ない」のと同じである。
国は人口減少と保険財政の限界を見据え、病床削減と機能再編を急いでいる。
今後は病院ごとの機能が明確に分類され、実績に見合わない急性期病院は淘汰される。そうした中で松本市立病院が急性期を目指すことは、国の政策に逆行し、経営破綻を招く危険な選択である。
運営赤字は確実に拡大し、毎年8億円以上の税金補填という「負の遺産」を残すだろう。市立病院が生き残る道は明確である。
それは、国の方針に沿って包括期機能を中心とする病院しての再構築を行うことである。
軽中等症の急性期患者を受け入れ、入院初期から治療とリハビリを並行し、早期在宅復帰を支援する。これこそが国が求める「治し支える医療」であり、市民にとって最も実用的な地域医療の姿である。いま求められているのは、巨額な箱を建てることではなく、機能を磨き、地域を支える病院へと再設計する決断である。
建設地は脆い南側の河岸段丘直下にあり、中段に農業用水路がある。地震対策が出来ていないので病院を建てる場所ではない。
松本市は国の政策転換を直視し、現計画を白紙に戻してでも、現実的な病院再構築を進めなければならない。

2.市立病院の急性期患者のシェアは3.8%に過ぎない

項目計算方法(2023年度 松本広域圏病院調査)
月平均患者数(人)調査期間中の退院患者数÷調査月数
医療圏シェア(%)当病院の月平均退院患者数÷当病院が所在する二次医療圏内のDPC参加病院の月平均退院患者数合計<厚生労働省の調査データをもとに算出>
平均在院日数(日)対象となる全ての退院患者の平均在院日数(入院日と退院日を含む)
複雑性指数(患者構成の指標)「当病院のDPC毎の平均在院日数を全国平均に合わせた上で再計算したMDC別平均在院日数」÷「全国平均のMDC別平均在院日数」(全国平均の場合は「1」となり、数値が大きいほど、治療に長期間を要する傷病の患者構成割合が多いことを表します)
効率性指数(在院日数の指標)「全国平均のMDC別平均在院日数」÷「当病院のDPC毎の患者構成を全国平均に合わせて再計算したMDC別平均在院日数」(全国平均の場合は「1」となり、数値が大きいほど、同じ傷病を治療する場合の平均在院日数が短いことを表します)
月平均患者数
(退院患者数)
医療圏シェア平均在院日数患者構成指標
(複雑性指数)
在院日数指標
(効率性指数)
松本市立病院149.43.8%8.50.901.24
丸の内病院180.14.6%10.40.901.01
安曇野赤十字病院290.17.4%10.50.991.17
松本協立病院218.25.6%10.90.991.04
まつもと医療センター354.89.1%11.91.020.99
相澤病院838.821.5%11.81.101.09
信大附属病院1,201.030.8%10.30.971.17
穂高病院112.22.9%8.80.791.04

2023年度 松本市立病院の評価

  1. ①松本広域圏での急性期患者のシェアは3.8%と低い。
    →重症患者は、信州大学病院と相澤病院に入院している。低いシェアは地理的な立地条件が影響している可能性もある。
  2. ②退院患者の在院日数は8.5日で短い。松本広域圏内で最短である。
  3. ③他の病院はシェアが少なくても、専門性を持って地域医療に貢献している。

出典:厚生労働省病院情報局(https://hospia.jp/

2023年度の患者紹介率31.3%、逆紹介率27.4%は非常に少なく、市立病院は波田地区と周辺の住民が利用する病院であることが分かる。

出典:松本市立病院

2023年度 松本市立病院の結論

市立病院の急性期患者のシェアは3.8%と少ない。西山地区の基幹病院だから急性期を行うため「巨額病院」が必要という管理者の考えは大間違いである。 管理者の「コンパクトな多機能病院」は時代錯誤である。

3.市立病院の診療実績と手術は少ない

2023年度実績

  1. 内科:誤嚥性肺炎と肺炎(108)、心不全(76)、腎・尿路感染(49)、内視鏡的ポリープ切除(46)、胆管結石・胆管炎他(44)
  2. 外科:鼠蹊ヘルニア手術(30)、乳房悪性腫瘍(20)、腸閉塞(保存的)(18)、結腸悪性腫瘍手術(15)
  3. 整形外科:股関節と大腿骨折手術(33)、前腕手術(11)
  4. 小児科:低体重児(30)、ウイルス性肺炎(24)、喘息(24)
  5. 産科:子宮全摘手術(16)
  6. 産婦人科:子宮良性腫瘍手術(28)、卵巣良性腫瘍他手術(11)、悪性腫瘍手術(10)
  7. 泌尿器科:経尿道膀胱腫瘍手術(24)
  8. 総合診療科:前庭機能障害(11)、体液減少症(11)、尿路感染症(11)

出典:市病院局( )は件数

主な疾患は、誤嚥性肺炎、心不全、尿路感染症で、入院患者の多数を高齢者が占める病院である。消化器内科による内視鏡的手術が行われているが、外科手術は簡単なもので開腹手術は少ない。整形外科、産婦人科、泌尿器科の手術件数も少ない。この診療実績から新病院には高度急性期医療として必要な3部屋の手術室、血管造営装置、2台のCTは必要ない。

4.市立病院が急性期を主体にした医療を行うことは適切でない

  1. 重症度の判定の指標となる急性期一般入院料の占める割合は、図1の如く17.6%と26.1%、18.7%と27.1%。入院料2が22.4%から27.6%は、急性期病院としては低すぎる。この数字から市立病院は急性期でなく「包括期病院」が適切である。

図1.市立病院の重症度

基準急性期一般入院料1急性期一般入院料2
2024年4月33.1%
2024年5月31.4%
2024年6月17.6%26.1%
2024年7月17.7%25.9%
2024年8月17.9%27.1%
2024年9月18.7%27.3%
2024年10月26.1%
2024年11月27.6%
2024年12月26.6%
2025年1月24.9%
2025年2月23.9%
2025年3月22.4%
  1. 市立病院と他の2病院と比較すると図2の如く、機能評価係数1、Ⅱとカバー率係数(※)が非常に低いので急性期医療を重点に置くことは無理がある。
    高度医療や難病を診ることができないので、一般病床から回復リハ・地域包括に患者を移して経営している。病院は、DPC指定からの撤退も選択肢である。現状以上に施設を拡大(救急医療・手術対応)するのでなく、今のままで国の地域医療構想である「包括期」を中心としない限り生き残れないであろう。

図2.令和7年医療機関別係数 他病院との比較

Kセンター0赤十字松本市立
医療機関係数合計1.53421.56831.4285
基礎係数(調整係数)1.04511.04511.0451
機能評価係数Ⅰ0.38360.4063※0.2693
機能評価計数Ⅱ0.08530.08304※0.0789
効果係数0.020930.023110.03356
 複雑係数0.018840.016650.02252
 カバー率係数0.027330.02733※0.00841
 地域医療係数0.018180.018180.01437
救急補正係数0.02140.03390.0229
  1. 2024年度の病院全体の稼働率は91,2%であるが、にわかに信じられない数 字である。一方、病院が策定した95%以上でないと安定した経営が出来きる目標に達していないので赤字が続くことになる。
  2. 平均在院日数17.8日(感染症を除く193で計算)
    報告は感染症を入れて計算しているのでおかしい
  3. 紹介率30%、逆紹介率47%は異常に低い。急性期で患者が集まる病院は90%以上、逆紹介は100%を超える。市立病院を名乗っているが、波田周辺の患者が利用する病院でしかない。

5.市立病院は議員の質問をはぐらかした

  1. 2025年9月10日の市議会
    宗田まゆ美、上條美智子、芝山稔、上條一正議員が質問した。
    ◯宗田議員は産科の医療過誤は助産師のミスだけでなく、助産師の過重労働や病院の産科体制の不備を追求した。助産師の退職者数は正確に答えなかった。外来の患者満足度が低下していることへの対策は曖昧であった。
    ◯上條(美)議員は市民から苦情や疑問が寄せられているに対し、管理者は、事故調査委員会は病院の15人で行なった。市民の信頼をどうやって取り戻すのかに対し、「和の精神」を掲げて努力すると回答した。曖昧な答弁で責任の所在や具体策については何も触れなかった。X線写真の読影は複数の医師で行うが、CT・MRIは外注と回答した。
    ◯芝山議員は「建設ありき」でないか。市長は黒字化が最優先、稼働率95%、給与比率65%が目標、赤字なら必要な対応をする。巨額な債務を償還するので納税者の理解が必要に対し、市長は丁寧に説明する。医療過誤、来院患者の実態、診療機能、建設費高騰、市財政の全ての観点から一旦立ち止まるべきに対し、管理者は「病院の役割は地域医療の病院である」と答えたが、答えになっていない。産科の方針に傾注するとした。市立病院は「何でもできる」を追求する必要はない。国の方針を見据え基本計画から見直すべきに対し、市長は見直しが必要かは産科問題の後に検討すると回答した。
    ◯上條(一)議員は市立病院で起きた分娩事故を受け「現計画を白紙に戻し国・県が進める新たな地域医療構想に沿った病院建設に取り組むべき」と提案。市長は「分娩を継続か廃止か市の方針を決め、10月市議会厚生委員会に示す。」「建設基本計画の見直しをするかは、その後に検討すべき」と答弁。市議会議員は厚労省に出向き、2024年12月厚労省の新地域医療構想は、高度急性期・急性期・包括期・慢性期を確認した。市立病院は包括期に相当する。間違った建設計画を進めれば大変なことになる。
    管理者は地域医療構想を自分に都合よく解釈しているが、明らかに時代錯誤で、論理的にも的外れと言わざるを得ない。管理者の考えは古いので白紙撤回しかないだろう。資料:10/1開催「第618回中央社会保険医療協議会」
  2. 2025年10月24日の市議会決算委員会・・・疑惑が残ったままである
    川久保文良、菊池徹、上條一正、上條美智子、塩原孝子議員が質問した。
    川久保議員は、急性期、回復リハ、地域包括、感染症の病床数と入院患者数、稼働率、診療報酬と収支を聞いた。
    管理者、事務部長、2人の職員のいずれも病床数を把握しておらず問い合わせて回答まで30分かかった。病棟ごとの診療報酬は日常的に把握していないと答えた。また、科別の診療報酬は出せないと答えた。チーム医療であり人件費の計算は病棟ごとに出せないと答えた。  
    ●病院の経営計画を立てるに当たり、病床機能ごとの診療報酬はどこの病院でも出している。事務部長は、議員が病床機能別と病棟を間違えたのを利用して出せないと答えた。診療科の診療報酬も毎年出しているので存在する。
    事務部長は嘘の答弁をした。病棟ごとの診療報酬が把握できずに、経営強化プランはどの様に評価するのか。
    幹部と職員が病床機能と人数を知らないことには驚いた。信じられない。
    菊池議員は、様々な材料費の増加率が6.4%に止まるっていることを正した。事務部長は、医業経費に変動費と固定費がある。市立病院は大手術をしないので材料費が増えないので低いと答えた。薬剤廃棄金額が年間100万円については、がん患者への投薬が中止(死亡)で期限切れになると回答した。
    ●低い増加率の要因として、手術材料が少ない事を答えた事務部長は、市立病院が急性期病院ではない事を自ら証している。
    ●市立病院の医業経費の伸びは6.4%と報告された。事務部長は変動費と固定費の内容と金額を明らかにしていない。光熱水費、電気代、委託費、給食費、外注費、医療機器リース代、薬剤費の全てが高騰している。材料費は手術の糸、針、ガーゼ等の消耗品だけでない、職員のマスク、手袋、エプロンも値上がりしている。消費税も10%かかる。他の病院の医業経費は15%から20%増えている。
    ●経費の内容を、項目ごとに前年と比べ数字を開示してもらわない限り6.4%増が本当か否か分からない。
    上條(一)議員は、令和5年度決算書の病床稼働率は80.5%になっているが、厚生労働省の資料だと72.1%になっている。この違いを説明して欲しい。
    渡辺事務長は、厚労省の数字は、稼働率でなく利用率ではないかと回答。
    ●市議会と厚労省へ稼働率で報告。同じでなければおかしい、説明になって いない。また、事務部長は在院日数を伸ばしたことを認めない。
    ●病院の稼働率を、機能が違うので、回復リハ99.1%、地域包括95.2%である。問題は病床の半分以上を占める急性期の稼働率である。急性期専門の病院でも85%位である。心臓、脳、開胸、開腹手術が殆どできない市立病院が収益を上げることは困難。
    ◯管理者は「コンパクトな多機能病院」を急性期に加え、回復期、地域包括ケアもやる。7つの診療科は増やせないので、なんでも見る総合診療科でカバーしていると答えた。
    ●総合診療科は救急医とその他の医師が、患者が診てもらう診療科を選別するだけで、いろんな診療をしているわけでない(不定愁訴や精神病が多い)。
    市立病院が、なぜ26の診察室を持つ広い待合室、大きな検査室と、前倒した大型検査機器購入、3つの手術が必要でそのために巨額病院を作るかについて何も説明していない。管理者には税金を使うという感覚がまるでない。
    上條(美)議員は、日帰り・人間ドックの受診者数と値段について尋ねた。
    2023年、2024年の受診者数と値段に大きな変化はない。
    塩原議員は、一般病床の単価が下がった理由を尋ねた。コロナ患者が減った。入院期間が長くなったと答えた。新入院患者は100人程度増えたと回答。
    ●外来の特定疾患指導料が減額されるので、病院の外来収益も下がる。
    ●事務部長は“すり替えや繰り返し答弁と嘘”で、医療がよく分からない議員を翻弄した。核心をついた質問には何も回答していない。また、黒字になった根拠をきちんと示していない。
    ●管理者は「コンパクトな多機能病院」は間違いないと、開きなおっていた。今回、初めて現実を認めた。“多機能は現病院で行っている。診療科は増やせないので「総合診療科」が行なっている。これからは在宅医療が大切”と述べた。(注:総合診療科は応急処置と患者の診療科を選別するのが役割)
    『巨額病院』を作り急性期医療を主体にしても患者は増えない。医業経費や人件費の高騰で病院経営は赤字が続き破綻してしまう。
    管理者の思いつきで、市長を納得させ市政を混乱させた罪は非常に重い。
    ●監査報告は、地域の開業医や大学との連携で病床稼働率が向上し経営強化プランの95%に近づいている。恐らく、病床可動率の中身が分からないのではないか。

6.腰椎圧迫骨折の誤診と杜撰な対応を医療過誤と認めた

この件は、緊急提言38(ホームページ28)で、佐藤八朗氏の「信頼される松本市立病院になって欲しい」を公表した。佐藤氏は市立病院からクレーマー扱いされていた。2025年9月24日、佐藤氏は佐藤病院長、松江副病院長、渡辺事務部長、安藤相談員他と3人の市議会議員が同席して会談した。病院は当日、佐藤氏の告発に対し弁明の文書を配布した。後日、佐藤氏から「なぜ病院は、私の告発の対応に相談員を起用したか? 文書は、整形外科医師はカルテを見せないのに見せた、腰椎のCTは撮っていない、いじめたのに相談したになっている等、虚偽の記載がある。前病院長の手紙は病院と職員に何も落ち度はないと記載。反省するというが誰一人責任を取らない体質を遺憾に思う。」という手紙が寄せられた。なお、議員から注意された相談員は、その場で佐藤氏に陳謝している。
佐藤氏は亡妻に対する市立病院の不適切な対応、①整形外科医は腰椎圧迫骨折を誤診した、②主治医は整形外科医の診断を信じ適切な治療をしなかったことを認め、③文章で謝罪を要求する、④妻に与えた肉体的苦痛と家族に与えた精神的苦痛を弁済するよう求めた。それに対し佐藤病院長は、病院の医療過誤を全面的に認め、病院長が謝罪文を書く、慰謝料は検討すると答えた。

7.病院管理者が行った不正の数々を明らかにする

  1. 管理者は、市の要請で医療者が携わって作った「提言」を否定し「見直し骨子案」なるものにすり替え、計画以前に行う経営改革をしない。
    市長は「提言」を了承したにもかかわらず、経営改革しない管理者を信じたのが誤りの始まり。(市長は巨額病院に憧れている?)
  2. 市立病院事務部長市病院局長兼任させる人事は、でたらめが罷り通ることになった。異常な人事を行った市に問題がある。
  3. 市立病院は基本計画を議会選挙などで、15人中9人しか病院建設特別委員がいない時期に5対3で了承させるでたらめを行った(委員長は採決に加わらない)。市が了承を急がせたが同意した村上幸雄委員長に問題がある。
  4. 市立病院は基本設計業者の選定で、5社に4階で発注し意中業者が提案した唯一の5階設計案を採用する不正を行い建設業界の不信を買った。これは業者契約に関するコンプライアンス違反である。
  5. 管理者は情報漏洩を警戒し建設課長、総務課長、医事企画課長を中途で更迭した。
  6. 市立病院は国(総務省)の経営強化プランに対し、経営改革をしなくても救急患者を増やし手術患者を倍増する実現できないプランを提出した。
  7. 市立病院は2024年度、延べ入院患者が年7,565人増え、病床稼働率は92.4%と発表。新規入院患者は前年に比べ103人増に過ぎない。延べ入院患者数を増やすため患者の入院日数を増やした結果、急性期1.7日、回復リハ3日 地域包括ケア0.1日延びている。組織的に入院日数を延ばすことは保険診療上問題である。外来患者数は1,786人(2.1%)減であった。
  8. 管理者は、職員が病院建設と市に反対する意見を封じるため、強権的な病院運営を行っている。これらに対し職員から内部告発が出された。
  9. 管理者は「コンパクトな多機能病院」と言うが、市立病院は既に多機能病院である。自分勝手に、多機能を何でもできる病院と考え大間違いをした。
    市立病院は、規模と実績から急性期を主とした病院ではない。救急医療・手術に力を入れ、広い外来、3つの手術室、過剰な検査機器の購入は無駄になる。国が新たに策定した地域医療構想の役割は「包括期」の病院である。
  10. 病院で一番大事なことは、患者のいのち・健康と尊厳を守ることである。①2018年中学生の脳ヘルニア見過ごし死亡(放射線技師不在)、②2019年腰椎圧迫骨折誤診(専門医の弊害)、③2021年透析患者がカテーテル留置ミスで死亡(隠蔽)、④2022年病理解剖に際しご遺体の取り違え(主治医不在)、⑤2025年助産師がモニター監視を怠り新生児を低酸素性虚血性脳症にした(麻酔科医不在)。市立病院の医療過誤は職員のミス、スタッフ不在、医療体制の不備が原因で医療事故に対する病院幹部の対応に根本的な欠陥がある。
  11. 管理者が病院で起きた患者の死亡事故を隠したのはコンプライアンス違反で処罰の対象である。
  12. 国は増えすぎた医療・福祉の削減を目標に掲げた。このような時代に、市長は先祖がいた“波田にいい格好をしたい”、管理者は“「巨額な病院」を作りたい”で財政難を承知で破綻する計画を強行することは不正行為である。
  13. 新病院建設総予算は7月22日、「特別委員会」に153億円強と報告された。
    銀行金利50億円と運動広場移転費5億円弱、波田駅周辺整備費を合わせ200億円をはるかに超える。更には、現在の病院建物の解体・後利用の膨大な費用も含まれていない。松本市の財政は火の車。管理者の強欲な計画に手を貸せば、市民が被害者になる。
  14. 病院は建設費135億円の半分を30年で市に償還する義務がある。赤字が増大する医療情勢で、慢性赤字病院が年2億円強の返却はできない。
  15. そもそも北野喜良管理者は初めから「潰れる病院建設」を計画した。

8.地に足がつかない職員の提案は笑い話にすらならない

  1. 夏の暑さから患者さんを守るため、井戸を掘り全館空調にする。建設予定地周辺に井戸はない。特異な地形から井戸を掘ることは難しい。
  2. バイオマスによる発電施設を病院に併設して電力を補う。木材が不足するとしてガス会社と契約した。職員は塩尻市の失敗から何も学んでいない。
  3. 現場を踏まない上、対費用効果を考えない発想に役人の劣化を見る。
  4. 杜撰な提案を直ぐ採用する松本市は本当に大丈夫か?
  5. 管理者は病院の宣伝にキャラクターと高齢者の草取り畑を作るという。
    ユルキャラが玄関に立ちリハビリに草取り? 病院もおかしくなった。

9.市長の役割は何か

  1. 市民の生命を守ることである。
    災害(南河岸段丘の崩落)から市民を守るため、病院建設地はより安全な場所を選択する。(伊那市は天竜川の氾濫を恐れ街から離れた高台に移築)
  2. 市民の財産を守ることである。
    財政の健全化を図るために無駄な支出を省く。医療の質と量に恵まれた松本市の西外れに「巨額病院」はいらない。金利を合わせ200億円以上の支出は松本市の財政に大穴を開ける。

10.市議会議員の役割は何か

  1. 市民の生命を守ることである。
  2. 市民の財産を守ることである。
  3. 市の政策に間違いがあれば、正すことが議員の役割である。
  4. 「巨額病院」に賛成する議員は、①国の医療政策に合致しているか、②現在の社会・経済情勢で持続可能な病院を証明する責任がある。
    市民の付託を受けているからには “見ざる・聞かざる・言わざる”は、市議会議員としての資質が問われる。
  5. 病院建設地は危険で狭い場所ではなく安全で広い場所にすべきである。

11.地元新聞社は市に忖度して市立病院の情報を報道しない

  1. 地元新聞は、市と市立病院に都合の悪いことはいっさい報道しない。
    ①菅谷市政では、建設候補地であった鉄工所跡地の土壌汚染について報道しなかった。
    ②臥雲市政では、病院経営が赤字続きなのに、コロナ禍で国と市の膨大な補助金を承知の上で、連続黒字と報道した。入院患者が年8,000人増え病床稼働率が92.4%というあり得ない数字を検討せず報道した。大本営発表で良いというならメディアの自殺行為。市民はどうした信毎と思っている。
  2. 信濃毎日新聞主筆の桐生悠々は、戦争に反対し政府の誤った政策に体を張って最後まで抵抗したメディアの偉人である。その信毎が松本市の財政を揺るがす杜撰な計画に沈黙するのは極めて遺憾である。

12.賢い松本市民になろう

  1. 市民は波田にある病院を殆ど利用しないので自分に関係ないと考えている。
  2. よーく考えてみよう。松本市は長野県で最も医療の質と量に恵まれた地域である。松本の西の外れにある市民がほとんど利用しない病院建設に200億円以上使えば財政に大穴が開く。松本市がやるべき事業や市民生活に大きな支障がでるうえに、後世に負の遺産を残すことになる。
  3. 市立病院建設は、決して難しい問題ではない。国が病院を削減する時代になぜ波田に、新たな「巨額病院」が必要か。高齢社会に役立つ「身の丈にあった病院」を安全な場所に作れば良い。
  4. 市政は市長の為でなく市民のためにある。理不尽な考えに反対するのは市民の権利である。

石庭で有名な京都龍安寺に徳川光圀が寄進した、つくばい(手水鉢)があります。表面に彫られた文字は、口の上下に文字をはめ「吾れ唯だ足るを知る」と読みます。欲望には切りがないことで現在の世の中にも通じます。

13.おわりに

2023年12月、国は地域医療構想である広域急性期型と地域密着型型の役割を高度急性期、急性期、包括期、慢性期に変えた。この変更理由は医療の高度化を維持し高齢者が激増する社会に応じた医療体制にしなければ、保険医療制度が破綻してしまうからである。急性期を行う病院はDPC対象病院の指定を受けるため看護師を7:1にした。その結果、大病院に看護師が集中した。高い診療報酬が得られるDPCは専門性を維持するのに高い技能を持った医師集団と高額な医療機器を揃える必要があった。また、高度救急医療も多額な維持費がかかる。2024年に国は、増え過ぎた病院を削減するために診療報酬の減額を行った。その結果、医療崩壊が始まった。大学病院をはじめ大病院は大赤字で、高度救急医療や高度医療からの撤退を余儀なくされている。2025年7月、中央社会保険医療協議会総会で救急医療は「救急搬送や全⾝⿇酔⼿術が指標であり、急性期の拠点に医療資源と症例を集積し、効率、安全性、有効性を高める視点が重要」と指摘した。
長野県で一番、医療の質と量が整った松本市が、国の方針と違う「巨額病院」を作る必要はない。市長は市民が納得できる説明を一度もしていない。
国は地方交付税交付金を交付している国は、破綻する計画を安易に了承するとは考えにくい。
全国で建設資材と人件費の高騰が続き、老朽化した病院の建て替えが困難になっている。長野県でも長野赤十字病院と駒ヶ根の昭和伊南病院が建設を一旦中止している。市長は、時代を見据え「巨額病院」計画を一旦凍結することが賢い選択である。ところで現在、市立病院は急性期111床、回復リハ49床、地域包括33床、感染症6床の多機能病院である。地域医療構想での役割は急性期でなく包括期である。病院局のデータでは、DPCで重症度を占める割合が極めて少ないので、もともと急性期でなく包括期の病院である。それにも拘らず、急性期を主とした管理者の「巨額病院」は完全に間違っている。産科を除いて修正すれば良いという話でない。一から見直さなければならない。
市立病院は、病床が常に満床と宣伝したいのであろう。2023年の一般病床稼働率は80.5%、入院患者は103人しか増えていないのに、2024年度は91.2%であった(急性期病院でも85%程度である)。なぜ1年間で10.7%も上がったのか?
病院は延べ入院患者が7,565人増えたと発表。このことから、入院患者の退院を伸ばして稼働率を上げたことが強く疑われる。病院が計画的に入院日数を延ばす事は、DPC病院として求められる在院日数を短縮することに反している。
包括期病院として生き残るためには、ダウンサイジング、標榜科の削減と診療科のあり方の見直し、病床数に合わせた看護体制の見直し、訪問診療・介護・リハの充実が必要になる。市立病院は、負担が大きいので、松本市の他の病院に感染症第2類指定病院を引き受けてもらうべきである。
自分たちの「巨額な病院」ではなく地域に役立つ病院にする、包括期を行う在宅療養支援病院にするしかないのである。

市長が管理者の間違った建設計画を進めれば、新規事業は困難となり市民生活に支障が生じる。現計画は、市長公約である“誰一人置いてきぼりにしない”ではなく“市民を置いてきぼり”にする。松本市は危険な茶番劇をやめ、2040年に向け医療崩壊が始まっていることを根本に据え計画を再検討する必要がある。

14.急告

10月5日、中央運動広場と「波田せぎ」の視察に訪れた市民は、解体業者が広場フェンスの撤去作業をしているのにびっくりした。市に電話をかけると、「2月市議会で広場整備事業案が了承されているので問題ない。」と言われた。既に、運動広場代替地として波田健康福祉センター南側を1.4億円で買収、移転費を合わせ5億円弱である。これらのことを市民は誰も知らない。議員は工事が始まったことを知らなかった。マスコミも一切これを報じていない。
臥雲市長は、産科事故が起こった後、記者会見で、「一旦、立ち止まり慎重に対応してまいります」と述べた。まず、産科問題に時間をかけて検討するであった。ところが、市長はなし崩しで工事を始めた。既成事実を作り、ここまで進めたから市議会も了承するだろうという考えである。日本中の病院が財政難で建て替えが不可能になっている。建設費はまだ値上がりするだろう。今、全国の病院で計画の見直しを含め、自治体も慎重に対応をしている。松本市立病院建設は総額200億円以上投入し、さらに病院が潰れないために、毎年8億円の税金が必要になる事業である。市の財源に余裕はない。建てて仕舞えば、後は知らないでは市民が困る。予定されている市の事業は全て先送りになるであろう。総予算も市議会に上程されていない。市長は慎重を期すと言うなら、先ず医療関係者、病院関係者の意見を聞き、議会の論議を深め、市民に納得できる説明をして総予算を上程するのが筋ではないか。インフレはますます加速、医療費は増大、国を潰さないために厚労省は国の医療政策「地域医療構想」でさらに病床削減と機能再編を進めるだろう。それと逆行する「巨額病院」建設では、生き残れないことがはっきりしている。
市長公約「市民の納得と共感」は全くの嘘であった。市長だから、「議会が認めた予算を執行して何が悪い」と言うだろうが、少子高齢社会と医療のあり方が大きく変わり病院の役割も変わる。市長が希望する『巨額病院』は役に立たない。
物事には順序がある。なし崩しの工事は中断すべきである。