〜計画を凍結して病院改革を実施し成果を見る〜
1.はじめに
市長になると箱モノを作りたがるのは人間の性(さが)かも知れない。日本中に無駄な負の遺産が残っている。和合氏の「革新」市政は、中央図書館・総合体育館・音楽文化ホールの三大箱モノ建設の後、92票差で有賀氏に敗北。その有賀市長は、老朽化した市民会館の建て替えをサイトウ記念フェスティバルのための豪華なオペラハウスにしてしまった。市を二分した大騒動になり、有賀氏は再選されなかった。多選と箱モノ批判で当選した菅谷市長が主導した「民族資料館」の移転新築では、資料館の松本城内からの移転と基幹博物館というコンセプトで始まったが、地方の博物館が殆ど運営困難になっている今、目玉展示物がない只の巨大な箱モノになってしまった。巨額な税金を使う以上、慎重な議論と厳重なチェックが必須なのだが、首長主導の箱モノに関しては総じて杜撰な行政と議会の対応。修理・維持費も高騰している中、結局、負の遺産は市民が全て背負うことになる。大きな権力を持つ市長は大きな責任があることを自覚すべきである。
2.特別委員会のどこに問題があったか
地方自治法で理事者や議員の発案で設置する特別委員会は、特に大型建設事業を行う際に利用される。
1)議員は行政の案件を性善説で判断してはいけない
議員は、行政が提案する案件が全て理に適っていると考えるのは間違いである。案件の全体像を捉えるためしっかり学習する必要がある。それには会派で議論を重ね、考えを統一することである。それをしないで、議員が個人商店主をしている限り重要案件を理解することは出来ない。ここを疎かにするから間違いを犯すことになる。特別委員会9年間の議事録を読むと、議員が問題の核心(人口動態・病院経営・現病院の能力・これからの医療のあり方)を掴んでいないことが分かる。
- 菅谷市政:市立病院建設がなぜ浮上したかから話を進める。波田にある宮地エンジニアリング(宮地鉄工所)が移転を決めた。5.6万m2の敷地(後楽園球場より広い)をお世話になった松本市に10億円で譲渡すると言うのである。
松本市土地開発公社(以後、公社)は安い買い物だと話に乗った。しかし、発がん性物質で汚染された土地は公社の売買規約から買収対象外であった。理事者はそれを隠し議会も調べなかった。市は各部局へ土地利用を打診したが、手を上げる部局はなかった。また、公社規約に必要以上に広い土地は買えないことになっている。従って、初めから買えない土地であった。当時の副委員長が猛抗議したが、公社が全て責任を負う形で押し切られた。
病院は現病院の延べ床面積1,5万m2の2倍以上を要求した。3万m2以下の候補地は狭いから除外、土壌汚染があれば決まった後に検討する。・・・民間ではあり得ない杜撰な案件を市議会は了承している。これでは、市議会は何も考えないで理事者の案をただ追認する機関と言われても仕方がない。
その後、宮地側は最後まで汚染データを明らかにせず交渉は打ち切られた。
一方、病院経営は慢性赤字で債務超過(倒産)寸前であった。『市民の会』は市に抗議し病院の実態を示した。菅谷市長は建設計画の杜撰さを理解し計画を凍結した。市長は不在であった病院指定管理者(以後、管理者)を決め退任した。 - 臥雲市政:市長が早く建てることを焦ったことで混乱と不信が生じた。①自分が依頼し専門家が策定した「提言」を反故にした(信義違反である)。②前市長が経営改革を行って経営基盤を安定させるために管理者を置いたにもかかわらず。③管理者はそれをしないで、病院長が行う病院建設に手を出した。④臥雲市長が波田に“立派(巨額)な病院”を作るのを同意した理由はあるだろうが、市長は誰のため何の目的で病院を建てるか分かっていない。⑤市立病院に便宜を図り、事務部長と病院局長を兼任せる異常な人事、過剰な財政補助、基本設計業者選定で管理者が犯した公契約違反など、民主主義の土台を揺るがす不正を黙認している。市長はことの重要性を理解していなかった。⑥国の医療政策の大転換、人口減少・高齢社会、増大し続ける市のインフラ維持費、病院の能力を考えない計画は潰れる病院を作ることになる。
2)病院の縮小に反対は管理者の一人芝居であった
- 北野管理者:信大病院から松本医療センターに赴任し病院長を務めた。副院長時代、国は中信松本病院と併合を行なった。退職後、自薦で現職についた。臥雲市政で医療の専門家が策定した「提言」は、人口減少社会と国の医療政策を根底に市立病院の徹底的な現状分析を行って出した結論である。市長は「提言」を了承した。ところが管理者は、“現病院の経営改革と縮小を行えば病院は潰れてしまう”と主張した。松本市は、この時点で管理者を解任すべきであった。後任がいないので(探した痕跡はない)続けてやらせたのが間違いであった。その後、彼は「提言」を「見直し骨子案」に改竄し肝心の経営改革を行わないで経営的に無理な「巨額病院」にした。管理者は全国の病院が病床を1〜2割削減しなければ経営できない事態が分からなかった。
3)市長が建設を急がせたことで審議がゆがめられた
- 村上特別委員長(前議長):市から基本計画の決定を急がされた。当時、県議会と市議会選挙が重なり特別委員は15人中9人しかいなかった。このような時期に、病院建設の根幹となる「基本計画」を賛成5人、反対3人、(委員長棄権)で決めてしまった。村上委員長は大きな汚点を残した。
- 管理者:コロナ感染症が猛威を振るい、第二類感染症指定の市立病院はその対応に混乱を極めた。当時の事務部長は、大赤字で経営指標を示すことは不可能、混乱が収まるまで計画を中止するよう進言したが聞き入れないで計画を加速させた。また、事務方が作成した人員削減による経営改革案をボツにした。
国は、86%が赤字である自治体病院に「経営改革プラン」を策定することを求めた。特別委員会に提示されたプランは、①病床稼働率を増やす、②外科手術数を倍増する、③救急患者を増やすであった。これは、急性期疾患に重点を置く方針で職員から猛反対が出たが、市に反対することは厳禁と無視した。 - 特別委員会:「経営改革プラン」に沿った経営予想が示された。それによれば
病院は20年先も赤字である。直近の10年間で61.5億円の補助金を入れても41.5億円の赤字で合計103億円の赤字が生じる。こんな計画はあり得ない。 市立病院側はこれを審議した特別委員会に管理者、病院長、看護師長、事務部長他の職員を動員した。※A32:病院経営が破綻することが現実になりつつある
ところが、“頑張りますから、やらせて下さい”の大合唱であった。賛成派議員は“やらせてみればと声を張り上げ”、委員長は了承した。市議会は大赤字で潰れる病院に税金を限りなく注ぎ込むことを了承したことになる。残念ながらこれが松本市議会の実態であり、ほとんどの市民はこのことを知らないでいる。
4)議員は医療問題が分からない素人集団である
市議会議員の半数から構成される特別委員(15人)は医療・病院経営・病院建設の素人であり、理事者の出す検討事項を審議するが、判断基準を持たないので、病院側の言う通りになってしまう。某議員が漏らした“病院のことは難しくて分からない”が全てを物語っている。特別委員会で、病院建設を審議すること自体が無理である。それを補完するシステムを考えない限り同じ過ちを繰り返す。
市議会議員の内、「誠の会」7人、「政友会」7人、「他会派」2人が「巨額病建設」に賛成である。市民の会のアンケート調査に回答しない、現地視察に参加しない、特別委員会では「見ざる、聞かざる、言わざる」を通している。
市民から選ばれた議員の役割は理事者の提案を審議することであり、無条件に市長に従うことではない。このような議員は必要だろうか? 市長が基本計画の見直しを指示し考えを変えた今、彼らはどうするのか?市民は議員個人の発言と行動をよく見極める必要がある。二元代表制の地方自治で、議員は市政を変 える力を自らが持っていることを今一度自覚して欲しい。
3.今後の進展はどうなるだろうか
市長は、現行案が国の医療政策に反し財政的に実現困難であることに、やっと気づいた。これまで専門家が策定した「提言」を無視、市民の意見書は一読もしない態度をとってきた。「見直し検討委員会」の結論が3月末に出るが、市長は尊重してもらいたい。もう3度目の失敗は許されないのだから。
1)市立病院は、建設計画を直ぐ再開すべきでない
国の医療政策、診療報酬の改定、人口減少、経済情勢を見極める必要があるので、先ず数年間、病院改革に全力で取り組む必要がある。
2)経営改革を行うため、具体的な課題を実行する
病床削減、診療科見直し、人員削減を実行しなければならない。正しい経営報告を毎年5月に公表する必要がある。決算特別委員会向けの9月中旬では検討が半年近く遅くなる。
3)駅前の建設場所は再検討すべきである
中央運動広場は危険地帯で狭い。県道25号線も問題があるので、安全な場所に変更すべきである。病院職員は沈黙してないで要望を述べる必要がある。
4)医療関係者との意見交換や波田地区の住民の声を聞くべきである
建設見直し検討委員会は「地域型病院」の具体的な中身を規定し、監督する必要がある。なぜなら、市立病院が自分勝手な計画を作っては困るからである。
5)市立病院職員は自らの病院を守る覚悟がないなら、新築する意味がない
病院が本気で改革する気がないなら建設自体を止めるしかない。
4.松本市の政治のあり方が問われている
世界の日本評価は経済1流、政治3流であったが、現在は経済2流、政治は3流以下になってしまった。経済はグローバリズムに翻弄され、政治は独裁者による一帯一路・自国ファーストが席巻している。ロシアによるウクライナ侵略、イスラエルによるガザ住民の殲滅、アメリカによるエクアドルへの武力介入、中国による周辺海域の占有など世界は、帝国主義の時代に後戻りしている。被害を受ける市民や子供は家を失い飢餓で何万人も犠牲になっているが、国連は機能不全に陥っている。今、日本もトランプ政権の不条理なアメリカファーストに振り回されている。日本経済に注目すれば先進国家で最大の借金国であり、債務額は国家予算の2.4倍でギリシャ・イタリア以上である。高市首相は、政権維持のため唐突な「白紙委任状を私に遣せ!」解散を行い、財政規律を無視したばら撒き政策を掲げたが、野党も同じである。著しい円安と超長期国債暴落が世界からの回答である。市立病院問題は、市長(管理者)が自分のための病院を作るため市民を置いてきぼりにし、市の統制と法令順守を壊した悲劇であった。
5.おわりに
市長が郊外にある小病院の建て替えに「巨額病院」を作る話である。人口約23万の中核市には4つの大中病院と専門病院があり診療所も多く、県内で一番医療施設が充実している。市の財政は厳しく人口減少時代に巨額な病院は作れない。病院は健全運営ができなければ、潰れて後世に負の遺産を残すことになる。
国の方針に沿った「地域型病院」をコンパクトに建てる以外ないのである。管理者の間違いと市長の思惑で急性期を主とした計画は非現実的な構想に基づいている。民意に反した危険な賭けは破綻するので止めるしかない。市長は、ようやく現計画の失敗に気づき「巨額病院」計画の頓挫を理解したようである。
ところで、日本は世界一の高齢者の国であり、完備された国民健康保険制度が若年人口の減少で支えきれなくなっている。そこで国は、増えすぎた病院と診療所を削減する方針を掲げた。診療報酬の削減により病院も診療所も赤字になり存続が難しくなっている。なぜそうなるか説明する。日本は国民の医療負担を少なくするため低医療費政策を取ってきた、諸物価が高騰する時代に40年間も診療報酬(初診料・再診料)を据え置いている。国は医師の技術料を評価しない。薬剤費を下げ、その分を医療費に回す方法で1%以下の値上げをしてきたのに過ぎない。医療は人件費がかかる分野であり、医師の高い技術を維持し、それを支える検査技師や看護師を確保し、高額医療機器の更新も数年おきにしなければならない。現在の診療報酬では何をしても赤字経営を改善できない。このままでは、大学病院や地域の基幹病院が救急医療、高度医療、専門医療を維持できなくなり医師の育成や研究も困難になっていると政府に再三訴えている。
本年1月17日、市民と市議会議員有志による「これからの医療を考える市民の会」が勤労者福祉センターで開催された。180人の市民と市議会議員11人が参加した。著名な講師の話を熱心に聴講する市民に、関心の高さを窺わせた。
相澤孝夫氏(相澤病院理事長・日本病院協会理事長)は、「少子・高齢化による人口構成から医療ニーズが激変している」、「医療側の提供体制を変えなければミスマッチが起こる」、「大規模な手術をするような需要が減っているので無理してやれば赤字になる」、「診療所と役割を分け、地域型病院としての機能を高めることが必要」と述べた。
川真田樹人氏(佐久医療センター副統括院長・前信州大学医学部附属病院長)は、「松本療圏では手術件数は減少に転じている」、「急性期医療(救急医療・外科手術)が成り立たない病院が出始めている」、「医療圏全体で役割分担をする必要がある」、「専門に限らず総合診療ができる人材のニーズが高まる」、「医療者も働き方を変えていかなければならない」と述べた。
会場からは産科中止に反対する意見、杜撰な計画を放置してきた市と市議会に対しお叱りの発言、慢性赤字経営の病院は建てる必要はない、なぜ危険な場所に病院を建てるのか、新病院の規模に対し、演者から個人的には120から140床が適切との回答があった。会場から、全国の病院経営に詳しい専門家の貴重 な講演に参加しない市長や職員に対する不満が話されていた。参加者は現計画の中止と、これからの病院のあり方を共有した意義がある集会であった。
コラム王様の言うことには誰も逆らわない
私は、1月22日の市民タイムスの記事を見て驚いた。市長は21日の記者会見で、22日から6泊7日で自身を団長とする25人の市公式訪問団(野球に取り組む中学生12人、県野球協会松本支部役員、学校、大学、市関係者)がドミニカ共和国を訪問する。子供達を中心にスポーツ、文化、教育、観光など幅広い交流を進めていきたい。「海岸沿いのリゾート地で松本と対極にある海の文化の都市を交流先に選んだ」と説明した。(海外沿いリゾート地の藤沢市は松本市の姉妹都市ですが)。市民から寄せられた野球道具を寄付して24日と25日に2つの市で野球チームと交流試合をするとしている。
厳冬の時期に政情不安なドミニカ共和国に、なぜ市長が中学生と関係者を連れて訪問をするのか、正当性に大きな疑問があります。2021年東京オリンピックに際し同国の空手選手が松本市で合宿をした。その時お世話をしたテレビ松本社長との縁が始まりだと聞きます。同国に松本市との姉妹都市があるわけではありません。市長が一民間会社に肩入れするのも程度があります。野球好きの市長が個人で旅行するなら問題はありませんが、税金を使っての訪問は問題です。
最大の難点は、義務教育の中学生を1週間、学校を休ませて連れてゆくことです。中学生には夏休みも春休みあります。百歩譲ってなぜこの時期なのか?
これは市長が教育現場に介入したことになるでしょう。生徒の父兄は17万円の参加費を工面しています。この野球旅行は1年前に市議会教育民生委員会で了承されています。市民にとっては「寝耳に水」の話です。議員は教育委員会が了承しているので問題ない、中学生が国際交流することに賛成と言います。
しかし、学業のことは一切問題にされなかったと聞きます。なぜ、教育委員長は待ったをかけなかったのでしょうか? なぜ、中学校長は異議を唱えなかったのでしょうか? なぜ財政部長は予算をつけたのでしょうか? なぜ副市長は止めなかったのでしょうか? なぜ議長は審議に応じ議員は賛成したのでしょうか? 市長の希望で、学業中の中学生を同行させる。やってはいけないことが分からない市長(王様)に絶対服従する関係者。これを見る限り松本市政は機能していません。日本は民主主義国家で、政治を行う者は法の支配の元に統治と法令順守を大切に市民生活に寄与すると教えられてきました。先頭に立つ市長がそれを理解していないのは大変なことです。東京の友人と話すと、最近は兵庫県知事や横浜市長のように、頭の良いエリートは、「上から目線で問題を起こす人間が増えているよね」、「権力者だから何をしても構わないと思うからじゃない」と言われました。松本市長の無軌道ぶりは全国の注目の的になるでしょう。実に情けないことだと考えるのは、私一人だけでしょうか。(いけだ やよい)
病院建設問題の診断は重篤な「無責任病」です
1.はじめに
なぜ私たちの街では、巨額の税金を投じた公共事業が、後になって「負の遺産」と呼ばれることになるのでしょうか? 過去を振り返れば、多くの「箱モノ」が市民に重い負担を残してきました。そして今、松本市で再び、この問題が深刻な形で私たちに突きつけられています。それが、新市立病院の建設計画問題です。9年もの間、混乱と迷走を続けるこの計画は、単なる一つの事業の失敗ではありません。その背景には、私たちの税金がどのように使われ、物事がどのように決められているのか、その根幹を揺るがす深刻な実態が隠されています。緊急提言43で、この問題の根底にある驚くべき6つの事実を解き明かし、松本市でなぜ「負の遺産」が繰り返されるのか、その構図に迫ります。
2.すべての始まりは「買ってはいけない土地」だった
市立病院の建設計画は、その第一歩からつまずいていました。いや、そもそも踏み出してはいけない一歩だったのです。発端は菅谷市政時代。波田地区にある宮地エンジニアリングの広大な移転跡地(5.6万㎡)を、市が10億円で譲り受けるという話が持ち上がりました。しかし、この土地には二重の致命的な問題がありました。第一に、発がん性物質による土壌汚染です。松本市土地開発公社の売買規約では、汚染された土地は明確に「買収対象外」と定められています。さらに「必要以上に広い土地は買えない」とも定められていました。つまりこの土地は、汚染と広さという二つの明確な規約違反により、ルール上「初めから買えない土地」だったのです。にもかかわらず、行政側(理事者)はこれらの事実を隠し、議会もその調査を怠りました。本来ならあり得ない土地取得交渉がなし崩し的に進められ、そこへ、まだ対応期限がある市立病院を移転新築する? この最初のボタンの掛け違いが、その後の9年にわたる混乱と不信の連鎖を生み出す根本原因になったのです。
3.市長依頼の「専門家提言」を握りつぶした病院管理者
土地問題他で計画が停滞した後、臥雲市政が誕生し、事態の打開が期待されました。臥雲市長はまず、医療の専門家たちに客観的な分析を依頼し「提言」がまとめられました。それは、人口減少や国の医療政策という厳しい現実を踏まえ、市立病院が生き残る道として「経営改革と(病院の)縮小」を明確に打ち出す、極めて現実的な方針でした。ところが、市長が承認した専門家の提言は病院のトップによって握りつぶされます。当時、病院の指定管理者であった北野氏は、自身が提言の策定から外されたことに「縮小すれば病院は潰れてしまう」と主張し独自に記者会見を開いて提言を公然と批判したのです。そして、最も許しがたいことは、市長が了承したはずの「提言」を、管理者は「見直し骨子案」という名の全くの別物に改竄してしまいました。肝心要の経営改革は骨抜きにされ、計画は現実的な縮小路線から、経営的に無理な「巨額病院」建設にすり替えてしまったのです。通常であれば即座に解任されるべき事態ですが、市は「後任がいない」(探した形跡はない)という理由で、彼をその職に留まらせた。これは管理者の暴走であると同時に、それを容認した市政の深刻なリーダーシップの欠如です。管理者が専門家の提言を覆すのは異常です。これがまかり通ったのは、専門家の提言策定に尽力してきた副市長が市長をきちんと説得し、管理者の理不尽な言動を止めることが出来なかったにつきます。
4.分からないまま承認する市議会:20年の赤字計画が通った理由
行政の暴走を止める最後の砦は市議会です。しかし、市立病院問題において、市議会のチェック機能は全く働いていませんでした。その実態は、信じがたいほど杜撰なものでした。まず、病院建設の根幹となる「基本計画」が審議された特別委員会。県議会と市議会の選挙が重なる多忙な時期に開かれ、委員15人のうち出席したのはわずか9人。そして、この重要案件は、たった賛成5、反対3という僅差で承認されてしまいました。これは単なる僅差の採決ではありません。何世代もの市民の税金に影響する数百億円規模の決定が、わずか5人の賛成で、しかも閑散とした会議で決まってしまうという、議会プロセスの深刻な機能不全の表れなのです。さらに驚くべきは、その計画の中身です。病院側が提示した「経営改革プラン」によれば、新病院は今後20年先も赤字が続き、最初の10年間だけで市の補助金を含め103億円の赤字を出すという、民間企業では即座に却下される内容でした。この計画に対し、特別委員会で病院側は「頑張りますから、やらせて下さい」と訴えました。すると、あろうことか賛成派の議員は「やらせてみれば」と声を張り上げ、計画は了承されてしまったのです。市民の税金が際限なく注ぎ込まれる計画が、このような情緒的な理由で通ってしまいました。なぜ、こんなことが起きるのか。ある議員が漏らした一言“病院のことは難しくて分からない”が問題の本質を物語っています。専門的で難しいから分からない。だから行政や病院側の言う通りにする。これでは市民の代表としての役割を果たしているとは到底言えません。
5.市は建設場所の危険性をほおかむり議員は現場検証せずに承認
市は建設場所が危険地帯であることを明らかにせず、一部の工事で安全としているが、地震が多発する日本は危機管理の徹底が先優先事項になっています。
6.全国的な専門家たちの警告も「蚊帳の外」
市の内部でチェック機能が働かないのであれば、外部の専門家の声に耳を傾けるべきです。しかし、市政はその機会さえも自ら放棄しました。「これからの医療を考える市民の会」という集会で、全国的に権威のある2人の専門家が松本市の医療について警鐘を鳴らしました。
- 相澤孝夫氏(日本病院協会理事長): 「少子・高齢化による人口構成から医療ニーズが激変している」全国的傾向として「
大規模な手術をするような需要が減っている」と指摘。無理にそれを追えば赤字になるため、地域の病院や診療所と役割分担する「地域型病院」を目指すべきだと提言しました。 - 川真田樹人氏(前信州大学附属病院長): 松本医療圏では既に「手術件数が減少に転じている」「急性期医療(救急医療・外科手術)が成り立たない病院が出始めている」「医療圏全体で役割分担をする必要がある」「専門に限らず総合診療ができる人材のニーズが高まる」「医療者も働き方を変えなければならない」、医療圏全体で病院の役割を分担する必要性を訴えました。これらは、市立病院の「巨額化・急性期化」路線とは真逆の、極めて重要な指摘です。この重要な集会には、実に180人もの市民と11人の市議会議員が参加し、熱心に耳を傾けていました。しかし、本来最も聞くべき当事者である市長や市の担当職員は、誰一人としてその場に姿を見せなかったのです。松本市政が、いかに客観的なデータや市民の声から断絶しているかを象徴する出来事でした。
しかし、市長はようやく病院建設を「基本計画」から見直す決心をしました。核心は、誰が最後まで責任を持って市立病院の体質改善(経営改革と機構改革)をするかです? 中途半端や無責任では何も問題を解決しませんから。
7.まるで裸の王様? 市長の「個人的な旅行」が示す根深い問題
最後に、一見すると病院問題とは無関係に見える一つのエピソードを紹介します。しかしこれは、松本市政の根深い構造的問題を浮き彫りにする象徴的な出来事です。今年の厳冬期、市長は自らが団長となり、野球に取り組む中学生12人を含む「市公式訪問団」を率いて、カリブ海のドミニカ共和国を訪問しました。この訪問は、市長の個人的な興味が強く反映されたものと言わざるを得ません。そもそもこの訪問は、東京五輪で同国選手団の合宿でお世話になったという、某地元テレビ局社長との縁が始まりだとされています。市長が一個人の関係性のために、市の公式行事を動かしているとすれば、それは深刻な公私混同です。問題はそれだけではありません。なぜ、政情不安な国へ、厳冬期に? なぜ、子どもたちを学業期間中に1週間も学校を休ませてまで?(参加費17万円は保護者負担)しかし、最も深刻なのは、市長の意向に対して、誰も「待った」をかけなかったという事実です。教育委員会も、中学校長も、副市長も、そして市議会も。全員が市長の決定に異議を唱えず、絶対服従してしまったのです。まさに「王様の言うことには誰も逆らわない」という構図です。この構図は市立病院問題で起きていることと全く同じです。市長(管理者)の意向で非現実的な計画が進み、誰もそれを止められない。専門家の提言も、財政的な懸念も、市民の声も、すべて無視される。このドミニカ訪問は、松本市政全体のガバナンスが機能不全に陥っていることを、まざまざと見せつけたのです。
8.結論:負の連鎖を断ち切るために
ここまで見てきた6つの実態・・・二重の規約違反を犯した土地取得問題から始まった病院建設計画、専門家の提言の改竄、機能しない議会、土地の危険性を無視、外部からの警告の無視、そして市長への絶対服従というガバナンス不全は、市立病院問題が単なる一つの公共事業の失敗ではないことを示しています。これは・・・松本市政に深く根付いた「無責任病」なのです。このままでは、また新たな「負の遺産」が生まれ、そのツケを払わされるのは私たち市民です。この負の連鎖を断ち切るために、私たちに何ができるでしょうか。答えは一つしかありません。私たち市民一人ひとりが市政に関心を持ち、選挙で選んだ議員たちが本当に市民の代表として機能しているか、その発言と行動を厳しく監視することです。一市民として、私たちは「おかしなことは駄目」と声を上げ続ける以外、松本の未来を守る方法はあるのでしょうか。